あまり知らない同僚への結婚祝いは複雑な気分? ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)
あまり知らない同僚への結婚祝いは複雑な気分? ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)

Aさん(30代会社員)はある日、同じフロアの総務担当から「田中さん結婚するので、1000円お願いしまーす」と声をかけられました。 田中さんとは同僚ではあるものの、別部署で働いている人でほとんど話したことがなく、顔と名前が一致するかどうか程度の関係です。

Aさんは 「知らない人にまで払うの?」と思いつつ、周囲の人たちが次々と財布を取り出していたため、断りきれずに1000円を渡しました。

職場での結婚祝いや出産祝いの“徴収”は、「喜んでもらえたらいい」と思う一方、断りにくい空気になってしまうものです。しかも自身とあまり関係のない人への支払いだと、正直モヤモヤが残ってしまうでしょう。このモヤモヤとした気持ちをうまくなくすことはできないでしょうか。心理カウンセラーのノーム(荒木信雄)さんに話を聞きました。

■断れないお祝い金文化でも、“受け止め方”で心の負担を減らせる

ー職場のお祝い金文化にはどんな課題があるとお考えですか。

ダイバーシティが進む昨今は、多様な価値観に配慮する時代になっています。結婚を選ばない方や、公表したくない事情を抱える方も少なくありません。お祝いしたい気持ちはあっても、クラシックな価値観を押し付けることで、本人の中に不平等感や劣等感が蓄積し、人間関係の歪みにつながることも大いに考えられます。

ーあまり親しくない人へのお祝い金で“モヤモヤ”が生じる心理的背景は、どこにあるのでしょうか。

「年に数回の1000円イベント」であってもモヤモヤが生じるのは、過去の「搾取された体験」とリンクしていることがあります。人は選択肢を奪われた状況に強いストレスを感じやすいためです。

お金に限らず、自由や時間を強制的に奪われた経験があると、同じような強要の場面で感情が刺激されやすくなります。その結果、1000円程度の出来事であっても、不釣り合いなほど心がざわついてしまうのです。

ー「払わない」と言えない場合でも、モヤモヤを減らすための工夫はありますか。

「払わない」と言えないのは自然なことです。そこで1つの考え方として「陰徳を積んでいる」と捉えてみてはいかがでしょうか。いずれ違う形で自分に返ってくると思えれば、気持ちが和らぎます。

他にも、「嫌なことが起きた=自分へのセルフケアタイム」と捉えることもおすすめです。自分の中で「嫌なことをレベル1~3」に分け、それに応じた「気晴らしアイテム(小=コーヒー、中=買い物、大=旅行やエステなど)」を準備しておきます。そうすることで、ストレスの大小に合わせて柔軟にモヤモヤを処理できるようになりますよ。

また、視点を高く持ち「なんてことない出来事だ」とリフレーミングすることも有効です。宇宙や自然の映像を眺め、心を広げることでストレスを相対化するのも意外に効果的なんです。

お祝い金文化そのものを変えるのは難しいですが、自分なりの受け止め方とセルフケアの方法を持っておくことで、心の負担を最小限に抑えられるでしょう。

◆ノーム(荒木 信雄)
フリースクールや企業、国立大学でカウンセリングや研修を行い、メンタルケアとキャリア形成を支援。人間関係の悩みに特化した相談サービス「isee」を運営。著書『エンプティーママと子どもを幸せにする小さな魔法』

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)