歓楽街で働くホストクラブやキャバクラ、大人のお店のキャストたちは、派手で目立つ女の子ばかりのイメージでしょう。しかし実際にはそんな派手な子ばかりが揃う世界ではありません。割合は少ないものの「あら、迷い込んだ子羊が……」と言わんばかりの素朴なキャストもいて、予想外に人気を集めるケースも多いです。
そんな地味子ちゃんは飲み屋でのウケは悪いのですが、“オトナのお店”やビデオ業界には欠かせない人材。スレた雰囲気のない素人っぽさが、性産業ではプラスに働くからです。とは言っても、素朴なタイプが売れ続けるのはちょっぴり大変。派手な人口が過半数以上を占める世界ですから、「万人ウケしないキャスト」は特有の苦労と悩みが絶えないのです。
■“地味子”だった女の子が猛プッシュを受けたワケ
「わたし、地味なので」と自称するりりこさん(仮名・25歳)は、“オトナのお店”で働き続けて早5年。小柄な体型に黒髪のセミロング、メイクも薄めで年齢よりも遥かに若く見える女性です。
一見ふつうの女子大生といった感じなのですが、夜職歴はそこそこ長め。仕事を始めたきっかけはアイドルの追っかけに必要な資金を貯めるためでしたが、軌道に乗るまで相当な苦労があったんだとか。
「夜職に抵抗があったから最初はメイドカフェを選んだんですけど、何件か面接で断られるし、いざ入店させてもらえてもお客さんがつきませんでした。今のメイドさんたちって可愛いし、整形も濃いメイクも当たり前って感じなんですよ。だから地味顔の私はとにかくウケが悪くてトークも得意じゃなければ、お酒も飲めない。この時点で飲み屋はムリだと悟りました。
稼げなくて悩んでいたら、歌舞伎町でスカウトマンに声をかけられてJKリフレを勧められたんです。“素朴なコがウケるよ”と猛プッシュされ、言われるがままに入店。でも、絶対売れると言ってくれたのは担当スカウトだけで、最初のうちはお店の人にはあまり良い対応をされませんでしたね(苦笑)」
夜職に抵抗感を覚えながらも、稼ぎを優先してJKリフレに入店。声を掛けたスカウトの男性は「素朴さが武器になる。絶対に売れて稼げるようになるから」と背中を押してくれたものの、お店は彼女の受け入れを渋ったそうです。
その男性のひと押しによりようやく職場が決まり、勤務がスタートするとりりこさんの指名率は好調。あっという間に店舗スタッフの対応が変わったと言います(笑)
「とても夜職をしているとは思えない、普通の雰囲気が良い」とお客さんからは評判で、スカウトマンの予想は的中。日給10万円を超える日が増え、順調に収入を増やした彼女は23歳の時に派遣型風俗店へと移籍します。
■「売れた先」の苦悩
別店舗へ移った後もりりこさんの勢いは止まりません。在籍から約2年が経った今でもランキング入りの常連ですが、どうやら「昔ほど指名率が良くない」とのこと。ちょうど今、夜職人生のスランプに陥っているとボヤくのです。
「リフレ時代のお客さんは全員切れてます。あの人たちって若ければ若いほど良い!っていう真のロリコンなんですよ。プロの嬢よりも素人が好きだから、ベテランを嫌がりますよね。それに“地味で夜職っぽくない”が何よりのセールスポイントだと“テクニック売り”とかが難しいし、指名客のサイクルが全体的に短命。今、どういう路線で仕事を続けていけばいいのか、すごい悩んでます」
また素朴なキャラクターを貫くと、メイクの変化をつけたり、美容整形に手を出しづらくなるそう。指名客は夜の世界とは無縁な雰囲気のりりこさんを好むため、派手にすれば顧客がお店から足が遠のく恐れがあるのです。
「前、カラコンしてちょっと地雷風にしたら、“え?キャラ変わったの?”ってお客さんに驚かれちゃいました。ダメ?って聞いたらいつもの方がいいよ、と……。お金もあるし、一重瞼で高くない鼻がキライだから整形したいんですけど、手術したら絶対に指名客切れちゃいます。素人ウリのままで進んできちゃったから、いまさら路線変更が難しいのもすごいジレンマですね」
年齢も25歳と、夜職卒業や系統を変えるなど色々と悩む時期でしょう。現在の彼女は、“今後をどうしていくかが課題”だと言いました。元から持つ雰囲気や素朴さを一番のセールスポイントで仕事を続けていたため、「他の要素を持っていないから、段々“詰んで”きそうなのが自分でもコワイ」とのことです。
高収入は努力なしで長期間続かないのが最大の落とし穴。「誰にでもチャンスがある」ぶん「誰にでも落とし穴が待っている」のが、夜職のダークな一面と言えましょう。特に早い段階でチャンスを掴めてしまうと尻すぼみになる恐れがあるため、りりこさんは正にその分岐点に立っているのだと思いました。
歓楽街は誰にでもチャンスを与えてくれるため、決して見た目が全てではないのが面白いところ。誰もが振り向く美男美女でなくとも一攫千金が可能だと思うと、とても夢がありますね。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。
























