共働きで2人の子どもを育てる主婦のAさん(30代)は、ある朝の朝食準備中に冷蔵庫の卵の賞味期限を見て驚きました。なんと賞味期限が1週間前の日付だったのです。しかし1パックすべて捨ててしまうのはもったいないと考えたAさんは、スマホを取り出して「卵 期限切れ 食べられる?」と検索します。
検索結果を眺めてみても、卵を食べても大丈夫という情報はありません。Aさんは悩んだ挙句、「加熱すれば大丈夫じゃないかな…」と考えて完熟目玉焼きを作ることにしました。
Aさんのように、最近の物価高の影響もあり食材を無駄にしないためにも、賞味期限切れの食材を食べる人は少なくないはずです。ただ実際に賞味期限切れの卵を食べて、体調を崩すことはないのでしょうか。また美味しく食べる調理法はあるのでしょうか。管理栄養士の石本めぐみさんに話を聞きました。
■うっかり賞味期限切れ!その卵、まだ食べて大丈夫?
ー賞味期限が1週間以上過ぎた卵は食べられますか?
卵の賞味期限は「卵を生で食べられる期限」を指しています。購入してすぐに冷蔵庫で保存した卵であれば、賞味期限を過ぎても加熱調理すると食べられます。賞味期限を1週間過ぎた程度であれば、問題ないことがほとんどです。
とはいえ、卵も時間が経てば腐敗します。期限から2週間ほど経った卵でも食べられる可能性はありますが、おすすめできません。
ー卵を割ったときに見られる「これは食べない方がいい」サインはありますか?
腐敗した卵には、硫黄のような強い臭いがあり、割ってみると黒く変色していることがあります。このような異変が見られる卵は、絶対に食べないでください。また、殻の内側に黒いシミのようなものがある場合はカビの可能性があるため、食べずに廃棄しましょう。
新鮮な卵は、卵黄と卵白が共に盛り上がっています。しかし、鮮度が低下すると卵黄は平たくなり、卵白もさらさらと水っぽく変化し、広がりやすくなります。殻を割ったときに卵黄と卵白が混ざっている卵や、卵黄がすぐに崩れる卵も、鮮度が落ちている可能性があるので注意しましょう。
なお、白身が白く濁っていることがありますが、これは新鮮なサインです。この濁りは「炭酸ガス」によるもので、時間が経つにつれて抜けていくため、白く濁っている方が新鮮といえます。
ー卵は冷蔵庫のどこに置くのがよいですか?また、冷凍保存は可能でしょうか?
多くの冷蔵庫では扉部分に卵を収納するスペースがありますが、ここに保存するのはおすすめできません。
食品衛生法では、卵は10℃以下で保存することが推奨されています。冷蔵庫は4℃前後が適正な設定温度とされていますが、扉付近は開け閉めによって温度が変化しやすく、保存環境が不安定になりがちです。そのため、温度が安定している冷蔵庫の奥に保存するとよいでしょう。
また、生卵の冷凍保存は避けてください。殻が付いたまま冷凍すると、中身が膨張して殻が割れ、細菌が繁殖しやすくなります。殻を割って冷凍した場合も同様に、細菌が繁殖する可能性があるため、冷凍保存は控えましょう。
ー賞味期限が迫った卵を無駄なく使い切る工夫や、おすすめの調理法はありますか?
賞味期限が迫った卵は、炒り卵や錦糸卵にして冷凍保存するのがおすすめです。加熱調理することで、冷凍時に細菌が繁殖するリスクが抑えられます。
ゆで卵や卵焼きは冷凍すると食感が変化し、風味が損なわれやすい一方で、炒り卵や錦糸卵では味や食感の変化はあまり気になりません。
炒り卵や錦糸卵を冷凍しておくと、料理の彩りやトッピングに手軽に使えて便利です。ただし、冷凍しても少しずつ劣化していくので、できるだけ早めに食べ切るようにしましょう。
ースーパーで常温で並んでいる卵もありますが、家庭では常温保存してもよいのでしょうか?季節によってリスクは変わりますか?
常温で販売されている卵でも、購入後は冷蔵庫で保存してください。卵がスーパーの棚に常温で置かれているのは、「結露」を防ぐためです。
卵の殻には「気孔」という小さな穴があり、結露が発生すると、気孔から水が卵の中に入り込むことがあります。その際、殻の表面や空気中の雑菌も中に入り、卵が傷む原因になることがあるのです。スーパーでは結露を防ぐために常温で販売していますが、卵は冷蔵保存が基本なので、購入後は冷蔵庫に入れましょう。
なお、結露は冬よりも気温が高い夏の方が起こりやすく、卵が傷むリスクも高くなります。冷蔵状態で販売されている卵を購入する場合は、持ち帰りの際も保冷剤などを使用し、温度変化をできるだけ抑えてください。
◆石本めぐみ(いしもと・めぐみ)
国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























