夫の帰宅がやたらと遅く、連絡もつかない日が続くようになりました。カバンからは見慣れないレシート、タオルやポーチなどの小物も増え、どこか香り立つような気配まで感じる--。妻の勘は鋭いもので、「これはもう完全に浮気では」と直感したNさん(東京都・40代)。しかし、その真相はあまりにも予想外のものでした。
■疑わしすぎる行動の数々
最近の夫の行動は、誰が見ても疑わしく思えるものでした。帰宅時間はいつもより4~5時間遅く、しかもその間はLINEの既読もつかない。家庭を持つ夫としては、明らかに黄色信号といえる状況です。
さらに決定的だったのは、カバンから出てきたレシートと割引券。「ペア割」「2名様セット」と印字され、しかも支払いは現金。ふだんカードか電子マネーで支払う夫が現金を使うとは、ますます怪しい。疑惑は確信に変わりつつありました。
帰宅後には妙にいい香りを漂わせ、見慣れないタオルを持ち歩く夫。さらには、恋をしているようなうっとりとした表情まで見せます。ここまで揃えば、「浮気の余韻」と思っても仕方がありません。
夫の行動を一つひとつ振り返るたびに、Nさんの中で黒い影は濃くなっていきました。遅い帰宅、連絡不能、ペア割のレシート、現金払い、そしてアロマのような香りと見覚えのない小物。まるで「浮気マニュアル」を実践しているような状況に、頭の中では「浮気相手は誰?」「職場の人? それとも昔の同級生?」と勝手にキャスティングが始まり、修羅場のシナリオはすでに完成していました。
■真相は…あまりに肩透かし
しかし、問い詰めて出てきた夫の答えは、あまりにも肩透かしなものでした。実は、会社の同僚(男性)と会社近くに新しくできたサウナに通っていたのです。
「ペア割」や「2名様セット」はサウナ施設のキャンペーンで、見慣れないタオルやポーチはサウナグッズ。香りはアロマ水を使ったロウリュの香り。連絡がつかなかったのはスマホをロッカーに預けていたから。そして、あのうっとり顔は「ととのった」瞬間の表情だったのです。サ活にはまった同僚に誘われ、夫もすっかり夢中になっていたのだそうです。
疑惑のピースが次々と「サウナ」という言葉で説明されていくにつれ、Nさんは怒りの矛先を見失ってしまいました。
■夫婦関係も「ととのった」!?
「疑いを晴らすために一度行ってみよう」と夫に誘われ、半信半疑でついて行ったNさん。実際に体験してみると、想像以上の快適さに驚きました。心地よく流れる汗、爽快な水風呂。気づけば自分も「ととのった」顔を浮かべていたといいます。
こうして、あれほど深刻だった浮気疑惑は、夫婦の新しい共通の趣味へと変わりました。思い込みから始まった疑念が、思わぬ笑いと絆につながった出来事です。すべての行動が怪しく見えても、その裏側には意外な真実が隠れていることもある。サウナが夫婦関係を少しだけ「ととのえた」瞬間でした。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
























