誰にでも、楽しみにしているドラマや映画、小説があります。展開を予想したり、次回を心待ちにしたり--そんな時間も含めて、エンタメの魅力を感じる人は多いでしょう。けれど、その楽しみを一瞬で奪ってしまう人が、あなたのまわりにいませんか。しかも本人には悪気がないのだから、なお厄介です。東京都在住のMさん(50代)は、そんな“ネタバレ癖”を持つママ友Aさんの言葉に、日々戸惑っているといいます。
■ランチの席で起きた、想定外の結末暴露
Mさんのママ友・Aさんは、明るく社交的なタイプです。お互いの子どもが幼稚園から小学校まで一緒で、地域でも人気者。地元のイベントや学校行事にも積極的で、初対面の人ともすぐに打ち解ける--まるで地元の“ママ界のインフルエンサー”のような存在です。
そんなAさんには、ひとつだけ困ったクセがありました。それが「ネタバレ癖」です。
ある日、ランチの席でMさんが言いました。
「最近話題のあのドラマ、おもしろいよね~!」
するとAさんは、何のためらいもなく答えます。
「ああ、知ってる知ってる!あの犯人が警察官のやつでしょ?」
その瞬間、Mさんの心臓が止まりそうになりました。まさか核心部分をいきなり聞かされるとは。最近は伏線回収や考察を楽しみにしていたのに--スプーンを持つ手が止まり、熱気とともにスープの湯気が静かに消えていきました。
Aさんに悪気はありません。むしろ「知っている情報を共有してあげよう」と思っている様子です。しかし、聞かされる側にとっては致命的。推理の楽しみも登場人物の心情を追うドキドキ感も、すべて台無しになります。
その日Mさんは、「もうAさんにはドラマの話をしない」と心に決めました。
■「またやられた」…止まらないネタバレ
それでもAさんとは気が合い、話題も豊富で、一緒に過ごす時間は楽しいものでした。ところが、忘れたころに再び事件は起こります。
評判の映画の話になったときのこと。
「え?まだ見てないの?あの二人の最後がさ~原作ではさ~」
思わずMさんの頬がこわばります。「週末に見に行こうと思ってたのに!」と声を荒げてしまいました。Aさんは「ごめんごめん、つい口がすべっちゃって」と笑ってごまかします。
それなのに翌週には医療ドラマの話題で--「あぁ、あの患者さん助からないやつでしょ?」
と、またもやネタバレ。Mさんはもうがっかりです。
■「ネタバレ女王」はなぜ生まれるのか
ネタバレをしてしまう人には、いくつか共通点があるようです。ひとつは「話題の中心にいたい」という欲求。情報を知っていることで優位に立ちたい、あるいは主導権を握りたいという心理が働いています。
もうひとつは「共感したい欲」が強すぎるタイプです。「あのシーン、泣けたよね!」と伝えたいだけなのに、その感動を説明しようとして、ついオチまで話してしまう。本人は悪気のない共感のつもりでも、相手にとっては地雷です。
また、情報の境界線があいまいな人もいます。「まだ途中までしか見ていない」と聞いても、「じゃあ結末を言っても平気だろう」と勝手に判断してしまう--そんな思いやりのズレが悲劇を生みます。
そこで、MさんはAさんとの会話にルールを設けました。
「作品名を出す前に、どのドラマをどこまで見たかを確認する」
ところがAさんはそんな配慮を待ちません。
「あのドラマ、私は見てないけど、お父さんが実の親じゃなかったって展開だったんだよね、原作では…」
──はい、またやられました。Mさんの楽しみは、またもあっけなく消え去ったのです。
■それでも付き合いをやめられない理由
Aさんは決して悪い人ではありません。明るくて誰とでも仲良くでき、学校行事でも中心的な存在。だからこそMさんも、「ネタバレさえなければ本当にいい人なのに」と何度も思いました。
けれどAさんの言葉は日常の中に突然落ちる“爆弾”のよう。注意しても治らず、むしろ「私、ネタバレ魔なんだ~」と笑って話すほどです。
Mさんは宣言しました。
「ねえ、今度のドラマの話、最終回見るまで一切言わないでね!」
するとAさんは笑顔で返します。
「了解!でも最後、びっくりする展開なんだよ~」
──やっぱり、この人には敵いません。
◇ ◇
あなたの周りにもショックなネタバレはありましたか?
▽東京都・40代女性
毎年年末に行われるお笑いショーレース番組を毎年楽しみにしているのですが、去年は所用がありオンタイムで見られなくて、録画して翌日見ようと楽しみにしていたんですが、家に帰ったら旦那があっさり「〇〇が優勝したよ」と言って、本当に腹が立ちました。
▽埼玉県・30代男性
サッカー日本代表の試合の日、ギリギリ試合に間に合うかなと急いで帰宅したのですが、帰宅した瞬間、「パパ!日本代表が勝ったんだよ!」と息子から聞かされ、嬉しいような悔しいような、おかげで落ち着いて見ることはできましたが、楽しみを奪われた気分でもありました。
▽千葉県・30代女性
妹がネタバレ魔で、彼女は専業主婦なので、連続ドラマもネットドラマも話題の映画もなんでも見るのですが、たいてい彼女があらすじから展開まですべて教えてくれるので、私はすべて見た気になって、最近は全くドラマなどを見なくなりました。妹は読書はしないので、私はもっぱら読書を楽しんでいます。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
























