多くの人が「夜の街は若い子が働くためのもの」と思っているでしょう。確かに表立って活躍する華やかなキャストの平均年齢は20代です。しかしお店が若手だけで全てが成り立つと思ったら大きな間違い。今は歌舞伎町、六本木のクラブではなく、キャバクラにも、40代の現役嬢が働いているのです。
基本的にキャストは30代に差し掛かると引退か、会員制クラブやスナックに移籍するなどして方向転換を図る人が増えます。そんな中、キャバクラでの在籍を続けることにこだわりを見せる女性と、とあるきっかけで出会いました。
彼女は敢えて、お店のママ的なポジションも狙いません。裏方的業務もせず、若い頃から同じ働き方をキープし続ける非常にまじめな人です。
■キャバにこだわるワケ
歓楽街の某店で働くマヤさん(仮名)はなんと、今年で45歳の現役キャスト。40代半ばとは思えない美貌で、明るめブラウンのロングヘアがとても似合う色気たっぷりの女性です。公表年齢は40歳と“ちょいサバ読み”をしていますが、長い付き合いのお客さんには実年齢がバレているとのこと。
20歳で夜職デビューし、キャリアは20年越え。今まで働くエリアやお店を数カ所変えたものの、同じ職場に10年在籍した経験もあります。彼女曰く、転々とせず腰を据えて働くのが収入を安定させるポイントなんだそう(以下『』内、マヤさん談)。
『月収はずっと100万円を超えていますよ。若い頃は本当にダメ嬢で、始めてから3年くらいは超適当出勤でしたけど、数字を作れるようになったら仕事が面白くなって。それ以来ずっと週5~6日出勤する生活を続けています』
成績も勤怠も二重丸なマヤさん。夜の世界で長く売れ続ける存在は貴重ですから、きっとママ候補やクラブへの誘いなど様々な声が掛かったはず。しかし彼女は絶対に首を縦に振りません。興味を持ったことはあれど、キャスト教育や裏方的な業務には気が乗らなかったからです。
『35歳を超えたくらいからクラブやスナックへ移るか、一瞬悩んだんです。同世代のコはみんな派手な街を抜けて落ち着いた方にいくから、自分も右へならえした方がいいかなと思い……。当時は“ウチに移籍しませんか?”という誘いも多く、話を聞きに行ったこともありますが、後輩の教育とか、クラブのママ的な動きが自分には絶対ムリだなと。人の面倒を見るのがあまり得意じゃないんです。
接客も、パリピ寄りなんですよ(笑)今は静かに話すワザも習得したけど、基本ワイワイ系で若い頃はもっとうるさかった。お酒があんまり得意じゃないんで、誤魔化すために騒ぐ接客をしてたって感じですね。パリピとワイワイが板についてると、クラブ行こうって気にならないし、現役キャストであり続けるのが私にはぴったり』
ご自身の接客スタイルや性格などを加味して、キャバクラ勤務を続ける覚悟を決めました。店内で最年長になることや、お客さんからの“年齢イジリ”がストレスに感じた時期を抜けて、今はのびのびと自分らしく働けているようです。
■結婚歴がない現役40代キャスト
夜の世界のお姉様たちに多いのが、現役の途中に結婚→引退→離婚して出戻るか、結婚したままキャストを続けるケースです。マヤさんはどちらにも当てはまらず、結婚歴はありません。彼氏とも3年前に別れ、現在は“おひとり様”を楽しんでいます。
『一度くらい結婚したかったけど、なぜかそういう機会がなかったですね(笑)キャバ歴長くてずっと夜一本だと、まじで出会えないですよ!知り合う異性はお客さんと、アフター先で出会うバーの兄ちゃんくらいですが、街中に顔見知りが多すぎて、もうヘタなことはできません』
稼いだお金の使い道を尋ねると、今はほとんど貯金に回しているそう。たまに海外旅行をしたり、ハイブランドのバッグを購入する程度で「散々使って稼いでを繰り返してくると、もうほしいものも、行きたいところも徐々になくなる」と語ったのです。
彼女の目標は、“生涯現役”。多くの人が途中離脱する街で、自分がどのくらいキャバ嬢として通用するかを試してみたいとか。
『どうせなら体も売り上げも限界だー!ってところまで頑張りたいですよね。あとは40代でもお客さんはつくし、夜職できるんだぞって意地を見せたい。誰に向けて見せているのか、知らんけど(笑)少しでもベテランの女の子たちの希望になれたらとか、そんなことを思ったりもするんですよ』
打ち上げ花火のようなキャストやお店が多い中で、売り上げを長きにわたって安定させるマヤさんは夜職界の優等生。しかも彼女はSNSもあまり稼働させず、既存の顧客との付き合いが平均10年を超えています。これがベテランの底力、一発屋とは大きく異なる存在というのをひしひしと感じました。夜職は寿命が短い商売のイメージが強いですが、一部ではマヤさんのようなタイプも“いるにはいる”のです。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。
























