元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖
元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖

2025年9月末、六本木の高級キャバクラで約5億円の所得隠しが発覚しました。所得金額を低めに申告し、架空の経費をでっち上げたほか、国税局は一部上位キャストの確定申告の漏れを指摘します。歓楽街では名を馳せていた有名店ですが、見事なまでに「脱税の王道コース」を歩んでいたことが明らかになりました。

令和である現在、副業がブームとなったことが理由なのか、ナイト業界も税金に関して意識を働かせる人が増えています。しかし相変わらず危機感が薄いキャストが多いのは事実で、故意的な脱税はもちろんのこと、確定申告の「か」の字さえ分からないまま働くキャストも山ほどいるとか……!

正直なところ、毎年きちんと申告をおこなうキャストは未だ全体の半分程度との噂もあります。残りの半分は“しない、やらない、分からない”と三拍子揃った困ったさんが、歓楽街には溢れている状況です。

■ナイトワーカーの税金がやばい!確定申告の時期は「鬱」

「働いてしばらくしてから、確定申告というものを覚えました。売れてなかった頃はそういうの全然知らなくて。今でも税金払ってない子、周りにいますよ」

現役キャバクラ嬢のユリアさん(仮名・31歳)は21歳から夜の仕事を始め、25歳になるまで確定申告について1ミリも知識がありませんでした。お店に在籍しているとお給料から「厚生費」が引かれているため、雑費を払う=納税完了と勘違いしていたのです。

税金を意識し始めたきっかけは、ベテラン先輩・Aさんの言葉でした。どうやらAさんの知人のホステスは脱税がバレ、追徴課税が支払えないというトラブルに見舞われたとか。恐ろしいエピソードを耳にしたユリアさんは「明日は我が身だ」と震え、スカウトマンを通じて夜職専門の税理士に相談します。過去5年分まで遡って、必死に確定申告をおこなったのです(以下『』内、ユリアさん談)。

『ハタチちょっとでキャバを始めたでしょ。申告を遡れるのは過去5年分と聞いて、“あぶねー!”と(笑)ただ知識がゼロだったからドレスやヘアメイク、タクシーの領収書を全然残していなくて……。稼いだ額の半分以上(税金を)持っていかれましたよ。専門税理士は依頼金も高いし、思い出すだけでいろいろとトラウマですね』

飲み屋で働いているとドレスやヘアメイク代、タクシーなどの移動費、お客様へのプレゼントなど、経費として計上できる項目は多いもの。しかし、領収書がなければどうしようもありません。一度苦い経験を味わったため、現在の彼女はレシートの管理を徹底しています。

また店でキャストから確定申告の有無を質問された際、「絶対にしたほうがいいよ」と答えるそう。

『自分も理解していなかったですし、“確定申告?ナニソレ?”って気持ちはすごいわかる。だからこそ“やりなね”って先輩として言ってます。話題になってないだけで、稼ぎまくった末に追徴きたコはこの街にもいますよ。怖いですよね。最近のキャバは給料が振り込みの店舗も多いから、口座見られたらマジで一発アウト。

夜職が長くなってくると世の中的な“当たり前のこと”に疎くなりがちだから、店ももっと呼びかけてほしいなぁ。確かにウチら個人事業主ですけど、脱税者出たら店の印象悪くなるでしょ!(笑)キャスト同士での声かけだけではなく、店側のサポートももっとほしいというのが本音ですね』

■「確定申告?なにそれ美味しいの?」

ユリアさんおように、間に合ううちに確定申告をおこなえていれば“セーフ”なものの、中には一向に「なにそれ?」状態が続く人もいます。

次にインタビューに応じてくれたまゆかさん(仮名・23歳)は18歳からナイト業界デビューしました。一度も確定申告をした経験がなく「やばいとは思ってるけど、放置してます」と爆弾発言が炸裂します。税金は真面目に考えるべき問題だとはわかっていながらも、やり方がちっともわからなかったことが放置の原因になったとか(以下『』内、まゆかさん談)。

『仕事は風俗なんですけど、“毎日いくら稼いだ”なんて記録もつけてない。1回(申告を)しようと思って挑戦したけど、全然理解できなくて挫折しました。専門の税理士は頼むとすごい高いらしいから、未だに手が出ません』

まゆかさん曰く、彼女の知人である同業者のほとんどが確定申告をしていないとか……!風俗界隈は給料が日払い+手渡しのため、「きちんと帳簿をつけている子の方が珍しいのではないか」と語ります。

『多分顔出しでめっちゃ売れてる人とか、インフルエンサーみたいなキャストはちゃんとやってると思いますよ。うちらとは稼いでる額が違うんで(笑)でもそうじゃないコはだいたい無視でしょ。今まで3店舗務めたけど、店から“やった方がいい”みたいな話も、一度もされたことないなぁ』

知識ゼロのままの確定申告は少々難しいため、自分でおこなうことに躊躇する=やらないに繋がりがち。危機感を覚えつつも、わからない・できないでつまずくケースは決して珍しくありません。

インタビューに応じたユリアさんが仰る通り、店舗などのサポートは想像以上に必要なのかも……。個人事業主なので「自分のことで自分でやる」のは当然ですが、もう少しキャストが確定申告に対して前向きになる環境づくりも大事なのでは?と勝手ながら思ってしまいました。

ナイトワーカーが“世間からズレている”と言われるのは、このような問題行動の積み重ねが原因なのです。納税は国民の義務であり、自分自身の未来を築く行為ですから、どうか「当たり前の常識を当たり前にこなす」意識が歓楽街へ浸透してほしいものですね。

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。