キャバクラや風俗店など夜のお店に行列ができた時代では、月収100万円越えのキャストが過半数を占めていました。もちろん適当に仕事をしていればクビや出勤調整となるものの、今よりも集客が多かったため、店は人材確保に必死だったようです。顧客ゼロでも可愛ければ時給1万円が当たり前のように提示され、それなりの期間は広い心で面倒を見てくれたもの。
最近ではキャスト希望者が増え、ルックスレベルが上がった割に集客が減る……と、歓楽街は厳しい状況に陥っています。見た目が良ければ高時給が出るシステムは変わらないものの、仕事ができなければ即時給ダウン。酷ければ入店2、3週間で見切りをつけられるでしょう。
現代のナイトワーカーは、月収100万円にも満たない人が本当に多いのです。飲み屋や“オトナのお店”でも平均月収が50万円~くらいになっています。
■お客さんを呼んでも給料は……飲み屋の厳しい現実
「顧客を作って売り上げを立てる」のは水商売として当たり前のことですから、指名客がいないとキャストはスタートラインにも立てません。新人なら持ち客ゼロでも許されますが、入店後3カ月以内に1本もリピートがないとあっという間に2軍、3軍落ち。次々と新人が入店するため、お店は1人だけに構っている余裕など一切ないのです。
さらに「客を呼べばオールOK」とは言い難いのがキャストの頭を悩ませるポイント。例え集客ができても、最低セット料金で帰る客ばかりでは給料が上がりません。同伴を怠らずワインやシャンパンを空け、ショットが何杯も出るくらい頑張らないと高収入には繋がらないというシビアさ!
大衆キャバクラで働くAさん曰く「ドリンクバックは300円、ショット500円。指名バックは1000円で場内指名は500円バック。でも時給が3500円~4000円なので、最低料金の客だけ呼んでもそんなに稼げません」とのこと。いくら数千円の時給をもらっていても、給料から諸々の経費&雑費が天引きされると、日給2万円にも満たない日があるそうです。
また巷で稼げると話題のコンカフェ(メイドカフェやアイドルカフェなどを代表とするコンセプトカフェ)ですが、実はこちらも時給は1300円前後と、都心の居酒屋やコンビニと変わらないレベルです。ドリンクやシャンパン、チェキバックで稼ぐのが主流なので、お客さんから何もオーダーをしてもらえなければ手取りは想像以上に低くなってしまうでしょう。下手すると、一般の時給が良いバイトより稼げません。
指名客を呼ぶだけでは意味がないとなると、月収100万円は相当な努力が必要。飲み屋さんはニコニコ笑っているだけで高収入だと勘違いされがちですが、実際は大幅に異なるのが現実です。
■月収100万円なんてムリ?営業努力ゼロでは淘汰される時代
飲み屋に比べると風俗店は「100万円稼ぐなど簡単」と思われがちですが、現代ではこちらも相当な苦戦を強いられます。キャスト歴8年のベテランBさんは客入りの減少を指摘し、「風俗だからといってナメてかかると、今はすぐお茶引きます(指名客が呼べないという意味)」と厳しい口調で語りました。
「体を売ったら速攻で高収入!と思っていた時代が私にもありました(笑)確かに8年前は顔出しNG、日記とSNSをやらなくても毎日それなりに稼げたんです。時代とともにキャストの数が増えて競争率が上がり、バンバン表に顔を出せるコが増えた途端、そっちに客が集中。もともと客数が減ったのに、目立つコに指名が偏るもんだから、営業の工夫ができないと新人でもすぐ暇になってしまいますね」
今や日給10万円をキープするのも難しく、8時間出勤しても1人、2人しかお客さんにつけないキャストも……。こうなれば日給10万円など夢のまた夢、月収100万円とは程遠い生活が女性を待ち受けます。
「黙っていればお客さんが勝手に来る時代ではないので、こちらから“仕掛け”なければなりません。目立ちたい人からするとストレスなく頑張れるのでしょうけど、身バレを気にしたり、短期でパパッと稼いで辞めたいコにとっては不利な状況かと」
風俗業界は“最後の砦”のような印象が強いため、それさえもままならないのは本当に悩ましいですね。覚悟を決めても思うように稼げない時代だと、夜職に対して大きな希望を抱けなくなるのも仕方がないのかも。
月収100万円の壁は高く、さらに300万、500万を得るのは至難の業。ナイトワーカーたちも稼ぎ方や営業を工夫するか、どこかで方向転換をしなければ行き詰まる日が必ずやってくるのでしょう。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。