父の病室を訪れ、優勝報告のサプライズ(画像提供:由凪(ユナ)さん)
父の病室を訪れ、優勝報告のサプライズ(画像提供:由凪(ユナ)さん)

「入院中のパパに内緒で面会来たけど、看護師さん曰くシャワー中らしいから、ここにおいて待ってみる(優勝したことはまだ言ってない!)」

Xユーザー・由凪(ユナ)さん(@z32yuna)の投稿が、多くの人の心を揺さぶっています。由凪さんは、『第71回 賢友流空手道全国選手権大会』の高校生女子段外の部(※)「形(かた)」で見事優勝を果たしました。

(※『高校生女子の段外』とは、空手で黒帯などの段位を持たない高校生女子が出場するカテゴリーのこと。空手には形と組手の2種目がある)

その日、手術のため短期入院していたお父さんにサプライズで優勝報告をしようと病院を訪れた由凪さん。しかし、お父さんはちょうど不在でした。そこでベッドの上に賞状とトロフィーの箱をそっと置き、お父さんが戻ってくるのを待つことにしたといいますーー。

投稿には祝福の声だけでなく、父娘の絆に心をつかまれた読者から、7.2万件超の“いいね”が寄せられました。この後、病室で何が起きたのでしょうか。詳しく話を伺いました。

■父へのサプライズ報告の舞台裏

ーー優勝、おめでとうございます! 当日の競技の様子についてぜひお聞かせください。

「私は形と組手で競技に出ました。今回の大会では同じ形を連続でしてはいけなくて、予定では1戦目『平安初段』、2戦目『バッサイダイ』、3戦目『平安初段』、4戦目の決勝戦ではより複雑で難易度の高い『バッサイダイ』の2つの形を交互にしようとしていました。ところが、ここでハプニングが起きたんです。1戦目通過した時、誘導係の方から『次の形何しますか』と確認されたとき、『バッサイダイをやります』と答えたところ、『バッサイダイはだめです。段外の部なので平安しかだめです』と言われてしまいました。私の確認不足だったのですが、その瞬間、息が上がって泣き崩れてしまったんです。この大会のためにずっと練習していたバッサイダイができない。しかも平安初段とバッサイダイ以外の形は練習していなかったため、焦ってしまったのです。急遽、小学生のとき、大阪市大会で初戦敗退したときにやった形の平安5段で戦うことにーーすると2戦目通過、3戦目と、決勝戦まで登りつめ、優勝することができました」

ーーお父さんへのサプライズ報告はいかがでしたか。

「大会が終わって、母の車で病院へ向かっているとき、父に電話をかけたんです。『組手あかんかったわー』と、先に同点負けした組手の結果を知らせると、父から『形はどやった?』と聞かれたので『相手強かったわー』と言い濁しました。病室では『どんなふうにベッドに並べたらかっこいいかな』『父はどんな反応するかな』など考えながら20分ほど待っていると、父が戻ってきてーーベッドに置かれたトロフィーと賞状を目にすると『これいつのん? え、今日やん』と戸惑いながらひとりごとのようにつぶやいていましたね。今にも目が飛び出そうなほど驚いたようで、顔は真っ赤、茹でダコのようになっていました。病室にはほかの患者さんもいたので、タオルで口をおさえて声をおさえながらとても喜んでくれました。帰宅後、『最高のお見舞いや』と父からLINEがーー父が喜んでいる姿を撮影した写真を見ながら『長生きしてほしい』『こんなに喜んでくれるならもっと頑張りたい』と思いました」

ーー空手を始めたきっかけと、主な受賞歴を教えてください。

「私が空手をはじめたのは、外出中、見知らぬ人に背後から脅かされたことがきっかけでした。護身術として小学5年生のときに空手を習い始めたんです。今春、『第50回 大阪市空手道選手権大会』では、少年女子段外の部の“形”で優勝しました。このときは母が入院中だったため、病院に面会へ行き、サプライズ報告しました」

ーー今後の目標や挑戦してみたいことはありますか。

「空手を続けてきたことで、礼儀の大切さを学びました。また、怒りの感情をコントロールできるようになったように感じています。今後の目標は、苦手な組手を極めたいです」

お父さんはサプライズ報告の数日後に無事退院。最高のお見舞いは親子の大切な思い出として刻まれ、由凪さんの空手人生をこれからも力強く後押ししていくことでしょう。リプライには、胸に沁みるエピソードに温かい声があふれました。

「素敵な親子ですね」
「泣かされました…」
「優勝おめでとうございます」
「わあ素敵なサプライズ!!」
「こんなの嬉しすぎますよ…」
「お父様には何よりのお見舞いですね」
「きっと笑顔で元気100倍になっちゃうね」
「これ見つけたら絶対泣いちゃうやつ…!」
「いいパパなんだろうなー。そしていい娘さん」
「私にも娘がいますが、何かに夢中になってくれるだけで最高の親孝行です」

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)