三井住友信託銀行株式会社(東京都千代田区)が運営する『三井住友トラスト・資産のミライ研究所』は、このほど「住まいと資産形成に関する意識と実態調査(2025年)」の結果を発表しました。同調査によると、長く続いた低金利を背景に、「貯蓄はあるけど、頭金ゼロで住宅を購入する」という選択が、以前よりも自然なものとして受け入れられていることがわかりました。
調査は、全国の18~69歳(金融、調査、マスコミ、広告従事者を除く)の男女1万1435人を対象として、2025年1月にインターネットで実施されました。
まず、住宅ローン借入時期ごとに頭金割合を比較したところ、1990年までは「頭金ゼロ」はわずか13.3%にとどまり、「2割くらい」(34.2%)、「3割くらい」(21.8%)が主流だったのに対して、2021年~2024年では「頭金ゼロ」(36.9%)が最も多くなっており、かつては「頭金を2~3割準備すること」が、住宅購入時の一般的な目安とされていましたが、近年では「頭金はゼロ」での借入れが一般的となってきていることがうかがえます。
そこで、「頭金ゼロ」を選択した人に、「住宅の頭金や諸経費などを支払う前に保有していた金融資産額」を尋ねたところ、「500万円以上」あった人の割合は、1991~2000年の22.2%から、2021~2024年では38.9%へと16.7ポイント増加していることがわかりました。
次に、「住宅購入時の保有金融資産が500万円以上あった」と答えた人に対して、「“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”を選択した理由」を尋ねたところ、「手元資金の確保」(27.3%)や「金利の低さ」(25.9%)が上位となり、住宅購入後の支出や資産形成を見据えて「手元資金の温存しよう」という意識がうかがえます。
また、頭金の割合と借入金額の中央値の関係を見ると、頭金割合が少ないほど借入金額が高くなる傾向が見られ、借入金額が「4000万円以上」の割合は頭金ゼロが最も多く32.4%にのぼっています。
続けて、金利形態で見ると、頭金割合が少ないほど変動金利を選択する傾向が強く、特に、頭金ゼロでは変動金利が62.4%と、頭金4割以上(38.9%)のおよそ1.6倍に達した一方で、頭金割合が多いほど、固定金利(特に長期固定)を選ぶ傾向が強く、金利上昇リスクを避けたいという意識や、安定した返済計画を重視する姿勢がうかがえました。
借入期間についても、頭金ゼロでは「35年」での借入れが55.9%と半数を超えた一方、頭金割合が増えるにつれて、借入期間が短くなる傾向があり、特に頭金2割以上では、「35年」の借入期間の選択割合20.6%まで急減しています。
これら、“貯蓄はあるけれど、頭金ゼロ”を選択しているケースでは、「高額」「変動」「長期」を選ぶ傾向が見られたことについて同研究所は、「金利上昇局面で返済負担が増すだけでなく、資産形成の停滞や家計の流動性低下など、複数のリスクを高める可能性が考えられる」とコメントしています。
最後に、現在、住宅ローンを返済中の人に絞って「資産形成への取組み」について聞いたところ、頭金割合に関わらず7割以上が「資産形成に取り組んでいる」と回答し、住宅ローン返済と資産形成の両立を図っていることが明らかとなりました。
では、1年間でどれくらいの金額を資産形成できているのでしょうか。「年間資産形成額の中央値」を確認すると、頭金ゼロは「95.0万円」、4割以上では「135.6万円」となり、頭金割合が高い層ほど資産形成額が多い傾向がみられました。
調査を実施した同研究所は、「”頭金ゼロ”という選択は、手元資金を確保したいという意図や、金利環境を踏まえた判断があると考えられる。しかし、この選択が資産形成には、やや不利に働く可能性もうかがえた」と指摘。
その上で「住宅購入や住宅ローンの利用は、家計に大きな影響を与えるイベントのひとつ。だからこそ、『どう借りるか』だけでなく、『どう返していくか』、そして『その返済方法が教育費や老後資金など、他のライフイベントにどのような影響を与えるか』まで見通して考えることが重要」と述べています。

























