隣の家のソーラーパネルの反射がまぶしい! ※画像はイメージです(ei-mi/photoAC)
隣の家のソーラーパネルの反射がまぶしい! ※画像はイメージです(ei-mi/photoAC)

勤めていた会社を定年で退職したAさんは、長年愛してきた我が家のリビングで過ごす優雅な午後のひとときを大切にしていました。しかし半年ほど前に建った隣の新築住宅によって、Aさんの優雅な時間は邪魔されます。その原因とは、隣の家の壁面を覆う巨大なガラス窓と屋根いっぱいの太陽光パネルが、西日を反射してAさんの家を直撃していることです。

毎日午後になると、舞台のスポットライトのような光と熱がリビングに差し込むようになり、遮光カーテンを閉め切っても隙間から漏れる鋭い光に悩まされています。さらに長年大切にしてきた家具が、紫外線と熱によって変色してしまったのです。

隣人に窮状を訴えましたが自然現象の問題だと主張され、取り合ってもらえません。安らぎの場所を奪われ精神的にも限界に達しているAさんは、このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

■「受忍限度」を超えているかがポイント

ー隣家からの反射光が原因で生活に支障が出ていても、泣き寝入りするしかないのでしょうか

いいえ、決して泣き寝入りする必要はありません。法的には、お互いに我慢すべき限度である「受忍限度」を超えているかどうかが重要な判断基準になります。相手が「設計上仕方ない」と主張しても、被害がこの限度を超えていれば、それは違法な権利侵害となり得ます。

このケースのように、家具の変色や室温の異常上昇といった物理的な被害が生じていたりする場合は、受忍限度を超えていると判断される可能性が十分にあります。

ー光害トラブルを解決するために、どのような法的手段が考えられますか?

トラブルを解決するための法的手段は、段階的に検討することができます。まずは、いきなり裁判をするのではなく、弁護士会や自治体の公害審査会などが仲介する「ADR(裁判外紛争解決手続)」を利用する方法が有効です。第三者を交えた冷静な話し合いを通じて、植栽による目隠しや反射防止フィルムの施工といった現実的な妥協点を探ります。

それでも解決が困難な場合には、裁判所を通じた手続きへと移行します。具体的には、原因となっている太陽光パネルや窓ガラスの撤去、あるいは反射防止措置を求める「差止請求」や、精神的苦痛や家具の損傷などの実害に対して金銭的な支払いを求める「損害賠償請求」を行うことが考えられます。

ー反射光をめぐる裁判で、被害者の訴えが認められた裁判例はありますか?

平成24年(2012年)の横浜地方裁判所の判決では、住宅の屋根に設置された太陽光パネルからの反射光が隣家に差し込んだ事例について、「受忍限度を超える」として、パネルの撤去と損害賠償の支払いが命じられました。

この裁判では、反射光が非常に強く、カーテンを閉めても生活に支障が出ることや、2階のバルコニーに出る際にはサングラスを着用せざるを得なくなった点を訴えていたことなどが重視されました。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)