BBQが趣味のFさん(40代男性)は、この季節を心待ちにしていました。秋の週末に「やっと外でゆっくり過ごせる」とうれしくなり、Fさんは自宅の庭に友人たちを招き、炭火を囲んでBBQを楽しんでいたのです。
炭のはぜる音と香ばしい匂い、笑い声が混ざり合い、穏やかな時間が流れていました。ところがその矢先、隣家の窓が開き、「やめてもらえませんか」と苦情の声が。Fさんは「え?自分の庭でやってるだけなのに…」と驚きを隠せず、楽しい雰囲気が一転してしまいます。
このようなBBQをめぐるトラブルは実際にあるのでしょうか。弁護士の三浦先生に話を聞きました。
■トラブルに発展するのは”受忍すべき限度を超えていたケース”
ー自宅の庭で家族や友人とBBQをすることは、法律上問題ない行為でしょうか。
自宅の庭でごく少人数でBBQをすることは、違法ではありません。ただし自宅が賃貸物件やマンションなどの共同住宅の場合は、賃貸借契約や管理規約などで禁止されている場合がありますので、確認が必要です。
ー苦情やトラブルになりやすいケースにはどのような特徴がありますか。
たとえばハイシーズンに月3~4回以上、長時間にわたって煙やにおいを出し続けた場合などは、問題となる可能性があります。苦情を受けても改善しないケースだと、よりトラブルが深刻化しやすいですね。
行為が違法と判断されるのは、社会通念上、近隣住民が受忍すべき限度を超えていると認められる場合です。その判断にあたっては、被害の程度や時間の長さ、周辺の立地状況、防止策の有無など、さまざまな事情が総合的に考慮されます。
他にも近隣問題で苦情が出やすい典型的なケースとして、集合住宅におけるベランダでの喫煙、ピアノなどの楽器音、階下に響きやすい子ども達の足音などがあります。
集合住宅では居住者同士の距離が比較的近いため、生活音や臭いの苦情が出やすいものです。一方で、管理組合や賃貸人等を介して苦情を申し入れることができるので、話し合いによる解決を期待できるメリットもあります。
ー隣人から苦情を受けた場合、どのように対応するのが望ましいでしょうか。
まずは感情的にならず、冷静にご自身の状況を振り返ることが大切です。
自らの行為に問題があった場合は、再発防止に努める意思を伝えるだけでも印象が変わります。近隣トラブルは、初動での対応が重要です。初期の段階では、まずは当事者間で丁寧なコミュニケーションをとることが、早期の解決につながります。
ただし、苦情が執拗だったり、理不尽な要求を伴うケースは、第三者の介入が望ましいでしょう。管理組合や管理会社など、相談できる機関がない場合は、弁護士などの専門家に相談を。
万一、隣人の苦情が脅迫文言や物の損壊等を伴ったり、過度で不合理な金銭要求を含むなど違法かつ深刻なものに発展する場合は、迷わず警察等に相談しましょう。
ートラブルを防ぐために、事前にできる工夫はありますか。
まずは頻度・時間・煙対策を意識することです。さらに、苦情が出たらすぐに改善する姿勢も大切です。
また、BBQ後の火の始末やごみ処理にも注意が必要です。野焼きのような野外焼却に相当する行為にあたる場合には、消防署から指導を受けることもあります。火気や煙の程度には十分に気をつけましょう。
自宅の敷地そのものは自分の所有であったとしても、居住環境は、地域の人々が相互に関係しあう中で共有する生活の場です。それを頭に置き、計画的にBBQの準備に臨むことにより、おのずと必要な配慮が生まれ、自宅の庭でのBBQをより楽しむことができるのではないか、と考えます。
◆三浦綾子(みうら・あやこ)
弁護士 大阪弁護士会所属。塩野三浦法律事務所パートナー弁護士。一般民事、家事、企業法務、倒産、医療過誤等の事件を中心に取り扱っている。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























