山奥に遺棄された子猫(「さくらねこDays」さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)
山奥に遺棄された子猫(「さくらねこDays」さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

「遺棄するって、死ねってことですよね?」

千葉県市原市でTNR(捕獲・不妊去勢・元の場所に戻す)活動を続けるボランティア団体「さくらねこDays」のInstagram投稿が、大きな反響を呼んでいる。

山奥で次々と見つかった、生後まもない3匹の子猫。偶然とは思えないタイミングで起きた“ミルク猫ラッシュ”の裏側には、のら猫問題の深刻な現実があった。

山奥に1匹だけ置き去りにされた子猫

最初に発見されたのは、キジシロの男の子だった。

「10月30日の未明、外でずっと子猫の鳴き声がしていたそうです。近所の方が気になって外に出ると、山林に1匹だけ置き去りにされていました」

人里離れた山奥。野生動物も多く、生後3週ほどの子猫が1匹で生き延びることはほぼ不可能な環境だった。

「衰弱はしていませんでしたが、ここでは確実に命を落とすと思いました」

この1匹目は、明らかな“遺棄”だった。

■母猫を待ち続けた2匹目の子猫

その日の夕方、別の場所でも異変が起きる。

もともとTNRの依頼を受け、捕獲器を届ける予定だった民家から、朝に連絡が入った。

「目が開いたばかりくらいの子猫が1匹だけ現れました」

母猫が移動中の可能性もあるため、すぐには保護せず様子を見ることにした。しかし、夕方になっても母猫は現れなかった。

「低体温になってきていたので、緊急保護しました」

こうして2匹目のサバ白の男の子が保護された。

■さらに車の下に、3匹目の子猫が

2匹目を連れて帰る途中、再び電話が鳴った。

「同じくらいの子猫が、車の下にいます!」

現場に戻ると、3匹目となるサバ白の女の子が震えながら隠れていた。同じ日、別々の場所で、同じ月齢の子猫が3匹。

「正直、少し慌てました」

しかし3匹とも、母猫に育てられていた形跡があり、比較的元気だったという。

■「NNNに派遣されたと思いました」

あまりに出来すぎたタイミングに、団体のスタッフはこう語る。

「仕事の休みがバレたんじゃないかと思いました。NNN(ねこねこネットワーク)に派遣されたんだと本気で思いました」

1匹なら何とかなる。でも同日に3匹。

「怖い、でもやるしかない。絶対に助けて幸せにする、と覚悟を決めました」

■命がけのミルク育児の日々

保護後も、試練は続いた。11月には3匹が次々と激しい嘔吐を起こし、生死をさまよう事態に。12月にもウイルス性腸炎で衰弱し、毎日点滴に通う日々が続いた。

「いつ急変するか分からず、恐怖と隣り合わせでした」

現在はミルクを卒業し、元気に走り回るまでに回復している。

■「遺棄は犯罪」…増え続ける“行き場のない命”

なぜ、こうした悲劇が繰り返されるのか。

「避妊去勢をしていない猫が増え、飼えなくなった結果、遺棄されるケースが後を絶ちません」

飼い猫の外飼いや未手術も、同じ結果を生む。

「悩んだ末に捨ててしまう前に、手術を徹底してほしい」

■「手術代が出せない」は本当に得なのか

避妊去勢をためらう最大の理由は、金銭面だという。しかし現場では、こんな現実がある。

「毎月エサ代が5万円かかると嘆く方が多い。でも増え続ければ10万円、20万円になります」

一度の手術で、出産は止まる。

「たった1回の手術で、猫も人も苦しまなくて済むんです」

■捕獲できないと思い込んでいる人へ

「警戒心が強いから無理」と諦める人も多い。だが実際は逆だという。

「人慣れしていなくても、安全に捕まえる方法もあります。まずは地元の活動者に相談してみてください。捕獲器の貸出や捕獲についてのアドバイス、手術についても相談に乗ってくれると思います」

■「まずは相談を」TNR支援の実態

さくらねこDaysでは、TNRの支援として、捕獲器の貸し出しや捕獲のコツのアドバイス、実際の捕獲の手伝いまで幅広く対応している。さらに、野良猫に対応した動物病院の紹介や、助成制度の案内など、費用面の相談にも応じているという。

「猫を助けたい気持ちがあるなら、一人で抱え込まず、まずは地元の自治体や活動者に相談してほしい」と呼びかける。

地域や病院によって差はあるものの、野良猫の場合は助成制度を利用することで、通常よりも大幅に費用を抑えて手術ができるケースも多いという。

また、活動を支える寄付という形での支援も、全国のボランティアにとって大きな力になると話す。

■ 生まれてこなくていい命を、これ以上つくらないために

3匹の子猫は、今、確かに生きている。だが本来、こんな危険な目に遭う必要はなかった。

「遺棄される子を減らす一番の方法は、TNRの徹底です」

命を救う活動の裏側で、ボランティアたちは今日も現実と向き合っている。この連鎖を止められるのは、人間の選択しかない。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)