「猫と暮らす醍醐味は、全く思い通りにならないところ。コントロールしようとするのではなく、違う存在と一緒に生きることが“猫と暮らすこと”なんだと感じました」
飼い主さん(@wonwootamam)は愛猫ナビくんと暮らす中で、そんな想いを抱くようになった。ナビくんは、多頭飼育の家庭から保護された子。当時、生き方に悩んでいた飼い主さんはナビくんと出会ったことで日常が一変した。
■双極性障害でUターン…療養中に出会った“運命のキジトラ猫”
飼い主さんは20年ほど東京で暮らしていたが、躁状態とうつ状態を繰り返す「双極性障害」を発症。都会での生活に限界を感じ、帰郷した。
回復したら猫と暮らす--。その目標を心の支えにし、ペット可のマンションで暮らしながら療養していたところ、思いもよらぬ連絡が。個人で保護猫活動を行う友人の友人Aさんが、ナビくんの里親を募集していることを知ったのだ。
「キジトラが好きで、保護猫を迎えたい、できれば男の子の子猫を迎えたい…と思っていたので、運命を感じました」
連絡をもらった5日後、ナビくんと初対面。かわいさに魅了され、8日後の2025年2月27日にナビくんを迎えた。
当時、ナビくんは生後3カ月ほど。幼少期に実家で複数の猫と暮らしていたことはあったものの、自分ひとりで育てるのは初めて。飼い主さんはナビくんが快適に暮らせる方法を模索し始めた。
■お迎え初日に込み上げた“母性”と水分補給のさせ方に悩んだ日々
お迎え初日、飼い主さんは改めて小さな命の大切さを実感した。シャワーを浴びている間にナビくんが部屋の中で隠れ、居場所が分からなくなってしまったのだ。
部屋から出られるはずがないと分かっていたが、飼い主さんは心配が募り、外を捜索。帰宅後、しばらくすると、ベッドの下から小さな鳴き声が。姿を現したナビくんは体をすり寄せながら鳴いた。
「心の底からホッとしましたし、『この子は心細いんだ。守っていかなきゃ…』と強く思いました」
ナビくんの心を思い、飼い主さんは隠れられる“かぼちゃ型のハウス”を設置する。だが、ナビくんは自力で落ち着ける場所を見つけるのが得意だった。好んだのは、ハンガーラック下のカゴや本棚とソファの隙間。その場所が少しでも快適になるよう、飼い主さんは毛布やクッションを用意した。
「お迎え当初は甘えん坊で、よくお腹の上で眠っていましたが、去勢後は自立心が芽生えたのか、少し距離を取るようになりました」
ナビくんは生後7カ月頃から食が細くなり、水をほとんど飲まなくなった。動物病院での血液検査では脱水症状であることが判明する。
「好き嫌いが激しく、ウェットフードも食べてくれなくて…。病気になったらどうしよう…と思いながら、食べてくれるものを探しました」
今もナビくんは、自発的に水を飲まない。そのため、飼い主さんはウェットフードや水を加えたスープ状のフードをあげ、水分補給をしてもらっている。
加えて、ChatGPTにナビくんの年齢や体重を記憶させた上で、水分や栄養が足りているか相談。
「例えば、『今日はカリカリ35g、ウェット40g(加水20cc)、スープ35g(加水25cc)。水分量と栄養量は足りていますか?』と尋ね、客観的に数値を確認してもらっています」
なお、食事の時間が楽しくなるよう、褒めながら見守ることも心がけているそうだ。
■自立心が高まった愛猫が再び甘えてくれるようになって…!
飲食の問題に対して工夫を重ねる中で、ナビくんにある変化が。子猫の頃のように、再び体を寄せ、甘えるようになったのだ。
「もしかしたら、それまでは体がしんどかったのかもしれませんが、気持ちが伝わっているのかなとも思いました」
ナビくんは、ソファに座っている飼い主さんにこっそり近づき、服の中へ入るのも好きだ。まるで胎児のようにお腹の上で丸くなる姿に、飼い主さんはときめく。
「こんな風に無防備に身を預けてくれるのは、きっと飼い主だけだろうなと思うと嬉しくなります」
ナビくんは、飼い主さんと遊ぶことも大好きだ。遊びたいモードになると洗面所に隠れ、大声で飼い主さんを呼ぶ。
「私が『ナビちゃん見つけた~』と声をかけたら全力で逃げ、おいかけっこが始まります。エンドレスダッシュなので、体力勝負の日々です(笑)」
■迷ってばかりの人生を送る私の道しるべになってくれた愛猫に感謝
いつも迷ってばかりの人生を送る私の道しるべになってほしい--。お迎え当初、飼い主さんはそう思い、「ナビ」という名前を贈ったが、それは現実のものとなった。
ナビくんを迎えてから、飼い主さんは職業訓練校に通うように。現在は社会復帰を目指し、就職活動をしている。
「Uターン後は病気と向き合いながら、どう生きていくかを選び続ける時間でした。そのすべての選択の軸には、ナビがいた。守るものがいたから、強くいられたんです」
飼い主さんは生き続ける力をくれたナビくんに感謝しているからこそ、愛猫が安心しながら伸び伸び暮らせるよう、第二の人生の土台を着実に作っている。
「近々、実家に戻って母と暮らす予定です。ナビを見守る人が増えるのは、とても嬉しい。母はもともと猫があまり好きではありませんでしたが、今ではうちに来るたび『ナビちゃ~ん、ばあばが来たよ~』と猫かわいがりしています(笑)」
守りたい存在や目標があるからこそ生きられる日が、人にはある。ナビくんと飼い主さんが紡いてきた日々は、悩みながらも日常をなんとかこなしている人に深く刺さることだろう。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)























