オープンシェルターに遺棄されていた子猫の入った段ボール箱(保護猫団体「猫スマイル」提供、Instagramよりキャプチャ撮影)
オープンシェルターに遺棄されていた子猫の入った段ボール箱(保護猫団体「猫スマイル」提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

「オープンシェルターをしにくい理由の一つが動物の遺棄です…」

そう怒りと悲しみをにじませて投稿したのは、大阪で動物病院「おりひめ動物診察室」に併設されているオープンシェルター「どうぶつ保護施設 りことりた」を運営する保護猫団体・猫スマイル(@lovery.somanyan)。ある夜、施設の前に段ボール箱が置かれているのが見つかりました。中にいたのは、まだ幼い一匹の猫でした。

■「発見が翌朝なら…」 偶然が救った命

団体によると、猫が置かれていたのは病院とオープンシェルターの終了後。通常であれば翌朝まで気づかれなかった可能性が高い時間帯でした。

「たまたまお世話スタッフが夜にシェルターへ行き、箱に気づきました。いつも通りなら発見は翌朝になっていたと思います」

箱の中にいたのは、1歳未満の去勢していない男の子。名前は手紙に書かれていた通り「ラッキー」でした。健康診断では大きな問題はなかったものの、「なでると背骨が分かるほど痩せていた」といいます。

寒い夜、段ボール箱の中でどれほどの時間を過ごしていたのか。野生動物に襲われる危険もあった状況に、団体は強い憤りを示します。

■「身勝手な人間が気持ちを楽にするための手紙」

箱の中には手紙も入っていました。

「すごくいい子です。さいごまで見てあげることがどうしても出来なくなってしまいました。どうか、この子を幸せにしてあげてほしいです」

率直な気持ちを尋ねると、代表はこう語ります。

「身勝手な人間が自分の気持ちを少しでも楽にするために書いた手紙としか思えませんでした」

謝罪の言葉はあったものの、性格や好きな食べ物、遊び方などの具体的な情報はなし。さらに、「本当に申し訳ないと思うなら、少しでもお金が入っていてもよかったのでは」と、現場の本音も明かしました。

動物を育てるには医療費やフード代など多くの費用がかかります。突然の遺棄は、そのすべてを団体に押しつける行為でもあります。

■ビビりだけど、なでると小さくゴロゴロ

現在のラッキーくんは、健康状態に問題はないとのこと。

「性格はビビりで固まっていますが、ほかの猫たちに興味がありそうな仕草も見せます。怖がりながらも、撫でると小さくゴロゴロと喉を鳴らすんです。心を開いてくれたら甘えん坊になるかもしれません」

突然知らない場所に置き去りにされ、不安でいっぱいだったはずの子猫。それでも人に対して完全に心を閉ざしてはいない様子に、スタッフは希望を感じているといいます。

SNSには、

「なんてかわいい子なの。本当に可哀想」
「素敵な第二の人生が待っているよ」
「どうか新しい家族が見つかりますように」

といった応援の声が相次ぎました。一方で、元飼い主への怒りの声も少なくありません。

■遺棄は犯罪 活動を止めかねない“イレギュラー”

団体は警察に通報し、現場検証も行われました。動物の遺棄は犯罪です。

「経済的な問題、保護できる頭数、人手…いろいろなキャパを考えながら保護依頼を受けています。そこにイレギュラーな遺棄が続くと、保護予定だった子を受け入れられなくなったり、活動そのものが継続できなくなることもあります」

自分の都合だけで遺棄をすれば、その裏で救えたはずの命が救えなくなる。団体は「そういう身勝手な人が増えると助けられたはずの命を救えなくなることを考えてほしい」と強く訴えます。

■飼えなくなったときの選択肢はある

では、どうしても飼育が難しくなった場合、どんな選択肢があるのでしょうか。

「まずは地元で保護活動している団体に相談を。今はインターネットで里親募集もできます。どんな形であっても、その子が生きていける道を探すのが飼い主の責任です」

さらに、「そういう覚悟がなければ命を迎えてはいけない」と断言します。

終生飼育は簡単ではない…その現実を行政も含め社会全体で周知する必要があるとして、命を迎える前の講習や啓発の重要性も提言しました。

段ボール箱に入れられ、寒空の下に置かれたラッキーくん。偶然の発見がなければ、命の行方は分かりませんでした。

「ほとんどの人が良い人。でも、こんな人がいるから譲渡のハードルが上がる」

その言葉の重みを、私たちはどう受け止めるべきでしょうか。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)