田んぼの草むらで、じっとこちらを見つめる小さな影。それが、のちに「メル」くんと名付けられる長毛の男の子との最初の出会いでした。必死に逃げ回っていた一匹の野良猫が、深い傷を負いながらも自ら庭へとやってきたとき、Instagramユーザー・レオとむぎさん(@nana.reo.mugi)家族の「命を守る」挑戦が始まりました。
■田んぼで出会った長毛猫ーー運命の歯車が動き出した
出会いは2025年の秋。稲刈り前の田んぼの草むらで、こちらを見つめる小さな影に気づきました。当時は暗く、顔しか分からなかったといいます。心配になって近づくものの、距離を縮めることはできませんでした。
「保護する1カ月ほど前、初めて家の前の道を歩いているのを見かけました。そのとき、長毛でとても可愛い顔の猫だと気づき、驚きました。迷子ではないかと思い関係機関に問い合わせましたが、届出は出ていなかったようです」
それからは毎日のように田んぼで見かけるようになり、やがて庭にも姿を見せるようになったメルくん。娘さんと「絶対に飼い猫だよ」と話し、保護を試みますが失敗。ほどなくして、1週間ほど姿を消してしまいます。
「後になって思えば、その間に大けがをしてどこかに隠れていたのかもしれません。娘がインフルエンザで休んでいた日にメルが家に来たようで、仕事中の私に連絡がありました。ただ、娘以外が近づくと逃げてしまうため、その日は保護に至りませんでした」
■庭の椅子で待っていたメルくん、決死の保護作戦
運命の日は、年が明けた2026年1月15日。早朝、外で大きな声で鳴くメルくんの姿がありました。腕には深い傷があり、体はかなり痩せていたといいます。家族の心配は募るばかりでした。一度は見失ってしまいますが、奇跡は仕事帰りに起こります。
「帰り道、田んぼを探しながら帰りましたが見つからず……。半ばあきらめかけて家に戻ると、庭のイスにちょこんと座っているのを見つけました。まるで、私たちを待っていてくれたかのようでした。事情を知っていた近所の方が大きなケージを貸してくださり、娘がおやつで奥へ誘導し、私が入口を閉める作戦を決行。無事に保護できたときは、本当にほっとしました」
保護後はすぐに病院へ。興奮状態だったため翌日の再受診となりましたが、そこで意外な事実も分かります。
「娘が『絶対に女の子』と言っていたので私も思い込んでいましたが、先生から未去勢の男の子だと告げられ驚きました。傷は1週間ほど前のもので、もっと早く保護できていたらと悔やむ気持ちもありましたが、メルはケージで少しずつ落ち着き、ごはんも食べてくれるようになりました」
■先住猫の「シャー」も気にしない! 大物感漂う甘えん坊に
家での生活が始まると、メルくんは驚くほどの順応性を見せます。トイレは最初から完璧で、ブラッシングも大好き。その姿は、まるでずっと家猫だったかのようでした。
「翌週に傷の縫合手術を行い、その後に去勢手術や血液検査をしました。猫エイズは陽性でしたが、うちには同じキャリアの先住猫・うみちゃんがいます。適切な環境であれば寿命を全うできると聞いているので、二人とも穏やかに長生きしてほしいと願っています」
現在のメルくんは、とにかく甘えん坊で娘さんのことが大好き。リビングへ移動した際も、先住猫たちからの手厳しい“洗礼”をものともしません。
「先住猫にシャーと怒られても、パンチされても、まったく気にしていません(笑)。食欲旺盛で、ごはんの時間になると一目散にやってきて、先住猫の隣に堂々と座っています」
過酷な外の世界で傷つきながらも、自ら助けを求めるように庭のイスで待っていたメルくん。その勇気に応えるように、家族は今日も惜しみない愛情を注いでいます。
「まだお家での生活が始まったばかりで、不安もたくさんあると思うけど、絶対に幸せにするから安心してね」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)
























