怒られると思ったのか萎縮が激しい(吉谷光平さん提供)
怒られると思ったのか萎縮が激しい(吉谷光平さん提供)

上司として良かれと思って注いだ情熱が、部下から感謝されるとは限らないようです。漫画家の吉谷光平さんが描く漫画『今どきの若いモンは』からの抜粋エピソード『部下が退職代行で辞めてしまった話』では、そんな現代の職場が抱えるリアルなコミュニケーションの難しさを描いています。

物語は、些細なミスに対して必要以上に落ち込んでしまう新人・遠矢の姿から始まります。彼は同期の新人である朝日奈と同様のミスをしてしまったことで、上司の麦田の前で萎縮していました。その様子を見て麦田は「自分のせいで萎縮させてしまったのではないか」と焦り、遠矢に寄り添いながら、一緒に対策を考えることにします。

電子ノートを使って丁寧に説明し、「自分も同じミスをしてきた」「一緒に頑張ろう」と優しく声をかける麦田。しかし一方でもう1人の新人である朝日奈は、ミスをしても落ち込む様子はなく反省しているようにも見えません。対照的なタイプの2人に対し、どう接すればよいのか麦田は頭を悩ませます。

そこで翌日、麦田は2人を誘って公園でランチをすることにします。和やかな雰囲気の中で対照的な二人の性格を話し、「2人はお互い強いところと弱いところカバーし合えると思うんだよね」と伝え、「3人で力を合わせて一緒に頑張ろう!!」と呼びかけました。その後、麦田は場の空気を和ませようと、近くにあった滑り台を3人で一緒に滑る提案をし、その場は笑いに包まれます。麦田は「これできっとうまくいく」と手応えを感じていました。

しかしその矢先、人事部に呼び出された麦田は思いもよらない事実を知らされます。なんと遠矢が退職代行業者を通じて退職していたのです。さらに追い打ちをかけるように、自身の言動がパワハラではないかという疑いまでかけられてしまい、麦田は愕然とするのでした。

同作について、作者の吉谷光平さんに詳しく話を聞きました。

■ランチ会は「気楽」ではない。上司と部下のすれ違い

ー良かれと思ってやったことが裏目に出る状況について、どのように考えられますか?

こうした食い違いは、よくあることだと思います。送り側の行動が善意であれ悪意であれ、それを受け取った相手がどう感じるかは相手次第です。他人の感情まではコントロールできませんから。

ー和気藹々としているように見えた3人ですが、これは麦田の視点であって他の2人は各々違う気持ちだったのでしょうか?

そういうことだと思います。そもそも上司からランチに誘われて、心から気楽に行ける部下は少ないと思います。

ー物語の後半で、麦田自身がパワハラの疑いをかけられる展開にはどのような問題提起が込められていますか?

特定の問題発起をしたわけではありません。「どんなことでも相手によっては受け取り方が違う」「退職してしまえば上司に責任が問われる」という、今の社会なら十分に起こり得る現実をありのままに描きました。

(海川 まこと/漫画収集家)