先週末に誕生日を迎えたAさんは、ささいなことから夫と口論になりました。誕生日を祝ってくれた夫に感謝や愛を感じていた直後だったため、Aさんは夫に優しくしようと考え、自分の言い分をこらえて謝罪しました。さらにその翌日、仕事で朝早くから家を出た夫に、Aさんはメールでも謝りのメッセージを送ります。しかしメールは既読になるものの、返事は一向に送られてきません。
それ以来、夫の態度は明らかに変わりました。食事中もリビングでも、夫はAさんの方を見ようとしません。理由を聞いても「怒ってない」と短く答えるだけです。
この状況を抜け出したいAさんは夫に「私、何かまだ悪いことしましたか」と聞いても、夫は黙ったままです。しかも、この状況を子どもが察知し始め、「お父さん元気ないね」「何か怒ってるのかな」と不安そうにAさんに聞いてくるようになりました。
謝っても歩み寄ろうとしても、夫の気持ちはわからないまま、Aさんはどうすることもできず途方に暮れるのでした。
Aさんの夫のように、会話をしてくれない理由を話してくれないとき、Aさんはどのように向き合えばよいのでしょうか。夫婦カウンセラーの佐倉朱織さんに話を聞きました。
■嘘をついているというよりも、自分の感情をうまく言葉にできない状態
ー「怒っていない」と言いながら無視や不機嫌な態度をとるのは、どのような理由が考えられますか?
夫が「怒っていない」と言いながら距離を置くのは、嘘をついているというよりも、自分の感情をうまく言葉にできない状態にあるからだと思います。人は気持ちを言語化できないとき、言葉の代わりに沈黙や距離で表現しようとします。
夫の中には「納得できていない」「でも何と言えばいいかわからない」という気持ちが混在しているのかもしれません。
ー理由を言ってくれない相手に対して、繰り返し聞くのは逆効果でしょうか?
繰り返し聞くのは、残念ながら逆効果になりやすいです。「なんで怒ってるの」「どうして話してくれないの」という問いかけは、言葉にできない状態の相手にさらにプレッシャーをかけてしまいます。
それよりも大切なのは、自分の本音を静かに伝えることです。「あのとき、場の空気を壊したくなくて謝った」「本当は少し悲しかった」「ちゃんと話したいと思っている」というように、責めずに自分の気持ちを伝えてください。相手の心を開くきっかけは、自分が先に本音を見せることにあります 。
ーAさんのように謝っても状況が変わらない場合、どうすれば良いでしょうか?
謝っても変わらないとき、問題は謝罪の量ではないことが多いです。場を収めるための謝罪は、相手に「何に対して謝っているのかわからない」と感じさせてしまいます。
本来必要なのは「あのときこう感じていた、でもこういう言い方になってごめん」という、感情と意図をセットにした謝罪です。謝り方を変えるだけで、相手への届き方は変わってきます。
◆佐倉朱織(さくら・しゅおり) 夫婦カウンセラー
不倫やすれ違いに悩む女性を中心に、これまで多数の相談に対応。表面的な問題だけでなく、夫婦関係の土台となる「本音のコミュニケーション」に焦点を当て、感情の整理から対話の再構築までをサポートしている。心理学をベースに、依存や我慢に偏らない関係づくりを提案。「関係を壊さずに本音を伝える」実践的なアプローチに定評がある。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























