40代のAさんは、実家にいる70代の母親が塞ぎ込んでいることが気になっています。以前は庭いじりや友人とのランチを楽しんでいた母でしたが、ここ数週間は「何もする気になれない」と家で何もせずに過ごしていることが多いのです。
そんなある日、Aさんが実家に帰ると、母の腕が以前よりも明らかに細くなっていることに気が付きます。あまり食事をとれていないようで、話している間もずっと暗い表情をしていました。母のそんな姿を見たAさんは、精神的な病気を疑って母を病院に連れて行くことを決意します。
さっそく最寄りの病院を調べてみると、家の近くに精神科と心療内科があることが分かりました。しかしどちらも受診したことのないAさんは、母をどちらに連れて行くべきか迷ってしまいます。
精神科はもっと症状の重い患者が行くイメージがあり、母のような気分の落ち込みや食欲低下などの症状で受診していいのか分かりません。しかし、心療内科で十分な治療を受けられるのか不安な気持ちもありました。
Aさんの母親のように気分の落ち込みや意欲の低下が見られる場合、精神科と心療内科のどちらの受診が適切なのでしょうか。医師の鈴木隆二さんに話を聞きました。
■まずは医療機関とつながることが大切
ーAさんの母親のような症状がある場合、精神科と心療内科のどちらの受診が適切でしょうか?
Aさんの母親のように、気分の落ち込みや意欲の低下といったこころの不調が中心の場合、精神科の受診をおすすめします。
精神科の受診に抵抗を感じる場合には、精神科と心療内科の両方を掲げているクリニックや、かかりつけの内科医に相談する方法もあります。どの診療科を選ぶかで迷い続けるよりも、まず医療機関につながり、必要に応じて適切な専門医を紹介してもらうことが重要です。
ー精神科と心療内科の違いを教えてください。
精神科はうつ病や不安症、認知症に伴う精神症状など、こころや脳の働きに関係する病気を専門としています。一方、心療内科が主に対象とするのは、心理的・社会的なストレスが発症や経過に深く関係している身体の病気、いわゆる「心身症」です。ストレスによって症状が悪化する過敏性腸症候群や頭痛などがこれに当たります。
ただし、医療機関によって対応できる病気や専門分野が異なり、心療内科でうつ病や不安症の治療を受けられる場合もあります。受診前にホームページや電話で確認するといいでしょう。
ー精神科と心療内科の初診では、どのようなことをするのでしょうか?
精神科と心療内科の初診では、基本的に医師が現在の症状や生活状況について質問し、患者さんがそれに答える形で診察が進みます。
一般的には、どのような症状がありいつごろ始まったか、症状が日常生活にどの程度影響しているか、睡眠や食欲、体重、活動量の変化などを質問します。また、高齢の方の場合、物忘れ、時間や場所の認識、身の回りのことが以前と同じようにできているかも確認します。
そのため受診前に、症状が始まった時期や生活上の変化、服用している薬などを簡単にメモしておくと、限られた時間の中で状況を伝えやすくなります。ご本人がうまく説明できない場合は、家族が最近の変化を時系列でまとめて持参すると診断の助けになります。
◆鈴木隆二(すずき・りゅうじ) 医師/医療法人社団筑三会理事長・株式会社ADRバイオメディカルホールディングス代表取締役社長
消化器外科医として臨床の最前線に立ちながら、病院・クリニック経営、再生医療、ヘルスケア事業を統合して推進する医師経営者。医療法人社団筑三会理事長として、年間20,000件近い内視鏡検査、約800件の消化器外科手術を行う消化器専門病院を運営するとともに、東証スタンダード上場企業である株式会社ADRバイオメディカルホールディングス代表取締役社長として、再生医療の研究開発と社会実装を推進している。
専門は消化器外科、内視鏡診療、短期滞在手術。病院経営に加え、健診事業、精神医療、自由診療、大学との共同研究など幅広い分野で新たな医療モデルの構築に取り組む。
現在は、「医療を治療から価値創造へ」をビジョンに掲げ、臨床・研究・経営を横断しながら、日本発の再生医療技術を世界へ届けることを目指して活動している。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























