なんでNISA貧乏になっちゃったの? ※画像はイメージです(softglow/photoAC)
なんでNISA貧乏になっちゃったの? ※画像はイメージです(softglow/photoAC)

新NISAをきっかけに投資を始める人が増えるなか、「NISA貧乏」という言葉が注目され、国会でも取り上げられるほど関心が高まっています。 

会社員のAさん(32歳)も、「NISA貧乏」と呼ばれる1人です。なかなか貯金をすることができなかったAさんでしたが、家族ができ、将来に向けて資産形成を考え始めたタイミングで、新NISAをきっかけに投資を始めました。

SNSで「生涯投資枠の1800万円は早く埋めた方がお得」という情報を目にしたAさんは、毎月手取りの7割にあたる18万円を、つみたて投資枠と成長投資枠に振り分けて運用するようになったそうです。これを維持するために、一部は貯金を切り崩して継続し、気付いたら銀行残高はほぼ底をついていたといいます。

そんなある日、自宅の給湯器が故障し、買い替えに25万円が必要になりました。手元に現金がなかったAさんは、妻と口論の末、しぶしぶ保有していた投資信託を売却して工面したそうです。家族の将来のために投資していたつもりのAさんは、感謝されるどころか妻との間に大きな溝ができてしまったことに戸惑いを隠せません。

では、このNISA貧乏と呼ばれる状態にならないように、うまく投資をするためにはどうしたらいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。

■今ある生活を脅かしてまでやる投資は危険!

ーそもそも「NISA貧乏」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか

NISA貧乏は、将来への不安から非課税枠を埋めることを優先し、日常生活が圧迫されてしまう状態を指す言葉として使われています。

新NISAは非課税保有期間が無期限で、生涯投資枠も1800万円まで拡大されたことから、若い世代を中心に口座数や買付額が急増しています。その一方で、SNSなどで見た情報をそのまま実行し、投資額を増やしすぎてしまう人が一定数いるのが実情です。

ー生活防衛資金は、投資額とどのくらいのバランスで確保しておくべきですか

一般的には、生活費の3カ月から6カ月分ほどを現金で確保しておくことが目安とされています。

会社員であっても、病気や住宅設備の故障など急な出費は珍しくありません。Aさんのように手取りの7割を投資に回してしまうと、そうした事態に対応する余力が残らなくなってしまう可能性があります。

ただし、預貯金が十分にあるケースでは、この限りではありません。

ー急な出費でNISA資産を取り崩す場合、注意すべき点はありますか

値下がりしているタイミングで売却すると、含み損を確定させてしまうことになります。通常の証券口座であれば、その損失を他の取引で生じた利益と相殺できますが、NISAはもともと非課税の制度であるため、この損益通算ができません。生活防衛資金を確保できていれば、こうした不利なタイミングでの売却を避けやすくなります。 

非課税枠を早く埋めることよりも大切なのは、今の暮らしを守りながら続けられるかどうかです。Aさんの場合、生活防衛資金を整えたうえで、無理のない金額から投資を再スタートすると良いでしょう。

◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ) ファイナンシャルプランナー
 銀行勤務12年を経て、現在は会社の経理を担当。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)