雨に濡れて助けを待っていた子猫2匹(高村さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)
雨に濡れて助けを待っていた子猫2匹(高村さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

「何もできなくてすみません」

雨に濡れて冷たくなった子猫2匹を、体を温めながら4時間かけて運んできた保護主さん。その人は到着すると、涙を流しながらそう話し、お金を差し出したといいます。

けれど、子猫たちを受け入れたミルクボランティアの思いは違いました。

「保護主さんが行動してくださったからこそ、子猫たちを受け入れ、命をつなぐためのお世話を始めることができました」

この出来事をInstagramにつづったのは、兵庫県猪名川町で動物愛護活動に取り組むボランティアグループ「プロテクトあにまる」の代表、高村友佳さんです。高村さんに、子猫たちが運ばれてきた日のことと、その後の成長を聞きました。

■まったく鳴かない子猫たちを乗せ、4時間の搬送

保護主さんが見つけたのは、雨に濡れ、体が冷たくなった2匹の子猫でした。以前から知っていた動物愛護団体に相談したところ、ミルクが必要な子猫の受け入れ先として、プロテクトあにまるを紹介されたそうです。

本来なら、車で3時間ほどで到着する予定でした。しかし、焦りから道を間違え、搬送には4時間かかりました。

保護主さんは指示された通り、子猫たちの体を温めながら向かっていました。それでも2匹はまったく鳴かず、時間がたつにつれて弱っていくように感じられたといいます。

「助けたいという一心で、きっと保護主さんも相当焦り、不安な気持ちで運んでくださったのだと思います」

到着した子猫たちは、生後10日を過ぎたほど。抱きかかえたとき、体が冷たいという感触はありませんでした。保護主さんが搬送中、温め続けてくれたおかげだと、高村さんは受け止めています。

■夜中、自分でミルクを飲んでくれた

受け入れてからも体を温めながら、すぐにお世話を始めました。

子猫たちは哺乳瓶からミルクを飲めず、最初はカテーテルで胃にミルクを入れる必要がありました。ノミの駆虫を行い、目やにで顔が汚れていたため、点眼も始めました。

特に気がかりだったのは、保護される前に体が冷えていたことによる影響です。元気を取り戻したように見えても安心しきらず、その後の体調も注意深く見守っていこうと考えていました。

そして、その日の夜中。子猫たちは自分でミルクを飲めるようになりました。

「夜中に自分でミルクを飲んでくれたときは、少し安心しました。小さな体で生きようと頑張っている姿が、本当にうれしかったです」

まったく鳴かなかった2匹が見せてくれた変化でした。

■「何もできなかった」なんてことはない

子猫たちを託した際、保護主さんは涙を流し、「何もできなくてすみません」と、お金を差し出しました。

しかし、高村さんが感じていたのは、保護主さんへの感謝でした。

「見て見ぬふりをせず、助けたいという一心で車を走らせてくださったこと。本当に、本当に感謝しています」

雨に濡れた子猫を見つけ、相談し、受け入れてくれる人のもとへ運ぶ。その行動があったからこそ、2匹のお世話を始められました。

「すべてを自分ひとりで助けられなくてもいいんです。誰かに助けを求めることも、命をつないでくれる人につなぐことも、立派な行動です」

保護からその後のお世話まで、ひとりですべてを担う必要はない。今回の出来事を通じて、伝えたい思いです。

■今では離乳食も。サビの女の子は「おしゃべりさん」

取材時点で、2匹は無事に成長し、離乳食を食べ始めています。心配していた体の冷えによる影響も、今のところ見られないそうです。

目やにが出やすいため点眼は続けていますが、2匹とも活発。中でも、サビ柄の女の子のほうが「おしゃべりさん」なのだとか。まったく鳴かなかった搬送時とは違う姿を見せてくれています。

今後、ドライフードを食べられるようになれば、高村さんのミルクボランティアとしての役目はひと区切り。その後は、今回の保護について依頼を受けた保護団体のもとへ移り、新しい家族を探す予定です。

「2匹はとても仲良しなので、できれば兄弟一緒に迎えてくださる家族が見つかればいいなと願っています」

■「誰もができる動物愛護」を広げたい

乳飲み子のお世話には、昼夜を問わない授乳や排泄の補助、体調の確認が欠かせません。ミルクやフードといった消耗品に加え、通院や治療の費用も必要になります。

保護する人、お世話をする人、搬送する人、物資や医療費を支援する人。それぞれの力で、活動は成り立っています。動物たちの現状を知り、周りの人に伝えることも支えになると、高村さんは話します。

「私は『大きなことをひとりでできる人』を増やしたいのではなく、誰もができる動物愛護を広げていきたいと考えています」

また、保護主さんは母猫が走り去る姿を見たといいます。目の前の子猫を助けるとともに、同じ状況を繰り返さないための取り組みも必要だと感じています。

高村さんは、猫を捕獲して避妊去勢手術を行い、元の場所に戻すTNRや、地域での適切な給餌・管理について知ってもらおうと、自主制作した啓発チラシを保護主さんに渡しました。

「ひとりひとりが、それぞれ自分にできることをする。そうした人が増えていけば、世の中も、地域も、もっと優しくなっていくのではないでしょうか」

「何もできなくて」と涙した保護主さんが運んだ2匹は、今、自分でご飯を食べる練習をしています。助けを求めた人と、その声を受け止めた人。その両方がいて、子猫たちは新しい家族を探す日へと近づいています。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)