須磨マンスリー
須磨海岸(神戸市須磨区)では「里海」づくりが進む。里山と同じ概念で、人の手を入れることで、栄養価が高く、より多くの生物が生息できる環境に再生していく取り組みだ。須磨海浜水族園(スマスイ)園長の吉田裕之(62)は2016年、同園職員や漁師、ライフセーバー、住民ボランティアら計7団体約300人と「須磨里海の会」を設立。アサリなど貝類の定着を目指し、調査、研究、清掃を続ける。(津田和納)
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「昔のように、アサリが取れなくなった」。須磨の漁師のつぶやきを吉田は聞き逃さなかった。
かつて、須磨海岸は遠浅の砂利浜で、アサリのほか、ウチムラサキやマテガイなどの二枚貝がよく育ったという。阪神・淡路大震災以降、減少し始め、2010年からはゼロに近い状態が続く。
「変化の要因はなんだ」
大学で海洋生物学を専攻し、卒業後に入社した東京のベンチャー企業では、環境アセスメントや水産資源増殖を20年にわたって調査してきた吉田の研究心に火がついた。
副園長に就任した10年、早速、潜水調査を実施。アサリが繁殖する10月に幼生の個体数を調べ始めた。海岸に来遊する幼生数や稚貝の定着が少ないばかりか、砂地を固める性質のあるホトトギス貝によって、海底に“マット”が作られ、砂地の酸素を不足させて貝類の生育を阻んでいることが分かった。
さらに、園内の水槽で生育に関する研究を続けるうちに、植物プランクトンが育つ栄養が不足していることや、貝を食べるエイなどが入り込むようになったことが明らかになってきた。
海水温上昇も生態系のバランスを崩す素因だが、吉田が何より問題視するのが水質の変化。「大阪湾自体良好になりすぎて、生物が育つ素地が失われている」と危機感を抱く。
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「広くこの状況を周知し、豊かな生態系を育む海へ変えていかなければ」
吉田らが立ち上げた須磨里海の会は年数回、海岸調査を実施する。17年に遠浅化され、貝類の生育に好影響をもたらす環境が整ったこともあり、現在は2メートル四方の網を設置してアサリの発育状況を調べている。
また、市民とともに、くし状の爪がついた漁具「マンガ」でホトトギス貝の“マット”を取り払ったり、砂の状態や生物の生育を観察したりしている。最近は4センチを超えるアサリのほか、イシガニやアカガイも見つかっているという。
「黒潮の流れにもつながる須磨の海で、アサリがたくさん採れ、沖ではいろんな魚が群がる。そんな里海をつくり、子どもたちに残していきたい」。吉田の挑戦は続く。(敬称略)
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