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須磨マンスリー

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注文された商品を運ぶ男性=梵天屋
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注文された商品を運ぶ男性=梵天屋
支援員の橋本裕美さん(前列右)ら梵天屋を運営するスタッフ=梵天屋
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支援員の橋本裕美さん(前列右)ら梵天屋を運営するスタッフ=梵天屋

 神戸市須磨区妙法寺を取材中、無性にうどんが食べたくなった。目に飛び込んできたのは「手づくり うどん 梵天屋 ぼんてんや」の看板。そして、食欲をそそる「手作り」「味自慢」と書かれた旗。店頭のメニューに目をやる。かけ250円、かま玉350円。ぼっかけ(牛すじ)500円、冷しゃぶごまだれうどん550円…。「安い!」。迷わず暖簾をくぐった。(千葉翔大)

 同区に拠点を置く就労支援事業所「心笑」が運営し、2014年にオープンした。就労継続支援B型に分類され、利用者(障害者)は事業所と契約を結ぶことなく、比較的自由に働くことができる。現在、10代から60代の55人が通い、支援員とともに店を切り盛りする。中でも飲食業界への就職を目指す3人は週に5日、1日4時間ほど働く。

 30席ほどの店内は、お昼時とあってほぼ満席だ。悩んだ末、「冷しゃぶ-」を注文。支援員としてメンバーと一緒に働く女性(45)は「うちのイチオシはぼっかけ。こしのある麺と、牛すじからしみ出るうま味が絶妙なの。次回はぜひ」。

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 接客と調理を担当する男性(27)は、働き始めて6年になる。時間を認知することが苦手な反面、客の顔を覚えることが得意だという。初めは、箸を逆向きに置いてしまったり、包丁で指を切ってしまったりと失敗を重ねた。それでも熱心に仕事と向き合い、今では野菜のみじん切りが上手にできるようになった。火に対する苦手意識はあるものの、「前向き」な性格の持ち主で、将来の目標は「自分のお店を開く」ことだ。

 支援員の女性は、一人ひとり個性の違う利用者への接し方を日々模索しながら、「みんなにはここで満足してほしくない」と考えている。梵天屋はあくまで、正規雇用として採用されるために、技術を習得する場所。だからこそ厳しく接することもある。「できないことを、できるように。日々の積み重ねで自分に自信を持ってほしい」と語る。

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 「いらっしゃいませ」

 後日、橋本さんに薦められたぼっかけうどんを食べに再び店を訪れると、接客と調理を担当する男性をはじめ、メンバーの大きな声が店内に響いた。

 障害者と支援員で生み出す活気は、今日も妙法寺に元気を与えている。

2019/7/24
 

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