須磨マンスリー
野生生物の個体数の減少が続き、自然保護が叫ばれる今、須磨海浜水族園(スマスイ)は新たな未来像を描く。種の保存に向け、バンドウイルカの人工授精に挑戦する。
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水面から顔を出すイルカたちと向き合い、呼吸を計る。イルカはじっと「その時(ステージ開始)」を待つ。トレーナーがタイミングを合わせ、「ゴーサイン」を出すと、はじかれたようにプールに潜り、一斉にジャンプ-。水しぶき、そして子どもたちの歓声がはじける。
「あれがマミーです」
獣医師の毛塚千穂(32)が指さす。目線の先には、妊娠5カ月の雌のバンドウイルカ。「今年1月、スマスイで初めて人工授精に成功したんです」と毛塚が顔をほころばせる。
日本の水族園は長らく、和歌山県沖で行われてきたイルカ漁によって個体を確保してきた。しかし、2009年、漁を批判したアメリカの映画が公開され、国際的な問題に。日本の動物園、水族館約150施設が加盟する「日本動物園水族館協会」は15年、漁のイルカは買わないことを決定。現在、飼育個体による繁殖の方法を模索している。
スマスイではこれまで、自然交配に頼ってきたが、死産などが続いた。安定的な繁殖を求め、大学や他の水族館と連携し、人工授精の技術習得に取り組んできた。
17年には、スマスイの雄・カイリの精子を提供し、長崎県の九十九島水族館「海きらら」の雌・ニーハの授精に成功。毛塚は同館の職員らから人工授精のノウハウを学んだり、水族館同士の勉強会に足を運んだりして、妊娠から出産までのシミュレーションを重ねてきた。
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「これが処置室です」
水槽内で悠然と泳ぐイルカを尻目に、案内されたバックヤードには個体をつり上げるレールや機材が並ぶ。18年夏、雄・ガルから精子を採取し、凍結保存。マミーの排卵のタイミングを血液検査などで確かめながら、今年1月に人工授精を試みた。
排卵の6~12時間前に内視鏡を使い、精子を2回にわたって注入。後の血液検査で、妊娠を示すホルモンが検出され、妊娠が確定した。現在は週2回、人間用の超音波(エコー)検査で卵巣や胎児の様子をモニタリングしている。5月上旬には胎児は23センチまで成長し、子宮内で元気に動く様子が見られたという。
人工授精による出産は難易度が高く、予定日の来年1月に無事生まれれば日本で5例目となる。「水族館同士で連携し合い、より確実な繁殖方法を探っていくことも私たちの役割」。命を扱うプロの目は真っすぐだ。(敬称略)(津田和納)
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