須磨マンスリー
かつて須磨にも異人山があり、アメリカの財閥に嫁いだ芸妓も住んだ-。須磨区役所(神戸市)発行の「須磨の近代史」の一文に引きつけられた。芸妓とは戦前、京都の花街で名妓として名をはせ、アメリカの大富豪モルガン家の御曹司に見初められた「モルガンお雪」(本名・加藤ユキ、1881~1963年)。だが、人種差別に苦しみ、夫とは若くして死別する運命をたどった。実はこの夫婦、一時、須磨に暮らし、地域に灯籠を寄進していた。“明治のプリティ・ウーマン”とも言えるお雪の人生をたどった。(津田和納)
山陽電鉄の高架をくぐり、「異人山」と呼ばれた須磨区一ノ谷町2へ歩を進める。勾配20度の坂道を上ると、住宅街が広がっていた。ただ、現在は異人山の面影を伝えるものはない。
「須磨の近代史」によると、区内には1909(明治42)年、外国人45人が居住。鉄道建設に携わったイギリス人技師が住まいを構えたことを機に館が建ち始めた。大正時代には、63人が住み、うちドイツ人が4割と最多。区画は1番から55番まであったという。モルガンお雪は、10(同43)年ごろから数カ月、3番地に住んだとされる。
当時は国際結婚が珍しく、暮らしぶりなどが新聞記事で度々報道され、世間の注目を集めた。新天地のアメリカでは人種差別に苦しみ、夫婦で欧州を転々とした。疲れた2人は一ノ谷町にたどり着き、海の見える静かな洋館で暮らし始めた。同町は源平合戦の際、幼くして即位した安徳天皇が内裏を置いたとされ、平家滅亡とともに壇ノ浦で祖母に抱かれて入水した。その安徳天皇をまつる社「安徳宮」が館の近くにあり、信心深かったお雪は毎日のように通ったという。
住宅地にひっそりとたたずむ安徳宮。正面には灯籠2基があり、1基の裏面には「モルガンユキ」の刻印が。隣に並ぶ「加藤コト」は、お雪の母親の名前とされる。寄進されたのは11(同44)年。100年以上の時がたつが、お雪の名前は今も色あせることなく、この地に生きた証しを残している。
お雪が暮らした3番地にも足を運ぶが、洋館は既に焼失し、現在はアパートが立つ。須磨での暮らしの4年後に夫と死別し、長くフランスに暮らしたが、太平洋戦争を前に帰国。余生を京都で過ごした後、82歳で人生に幕を下ろした。高台から振り返ると瀬戸内海の水平線が見える。お雪も行き交う船を眺めて心を落ち着けたのだろうか。数奇な生涯に思いをはせた。
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