千夢酔が30回目の完成を迎え、献杯する淡路酒探偵団のメンバーら=千年一酒造
千夢酔が30回目の完成を迎え、献杯する淡路酒探偵団のメンバーら=千年一酒造

 阪神・淡路大震災の年に生まれ、復興の象徴として親しまれている純米酒「千夢酔(せんむすい)」が今年も醸造され、初搾り体験会が14日、兵庫県淡路市久留麻の「千年一酒造」で開かれた。日本酒愛好家ら約40人が、節目の30回目となる新酒の完成を祝った。

 千夢酔は、住民グループ「淡路酒探偵団」が淡路島の米と水にこだわった酒造りを目指し、1995年初頭に出来上がるよう千年一に仕込みを依頼した。完成を目前に起こった震災で酒蔵は壊滅的な被害を受けたが、唯一残ったのが千夢酔のタンクだった。職人たちは「何とかこの酒だけは」と心に決め、1カ月後に完成させた。その後も復興への思いを込め、同市で収穫した酒米「五百万石」を使い毎年造り続けている。

 体験会では、能登半島地震の犠牲者を悼み全員で黙とう。その後、杜氏(とうじ)の上野山善彦さんが「当時の社員は廃業も考えたが、皆さんの熱意のおかげで再起できた。今年は酸味と甘味のバランスがとれた、飲みやすい酒ができた」とあいさつし、全員で献杯した。参加者は新酒を味わった後、ひしゃくとじょうごで瓶詰めし、封やラベルを施して持ち帰った。

 酒探偵団の高田佐登美事務局長は「大震災を乗り越えたこの酒を励みに、皆で頑張ってきた。能登の地震であの日を思い出しつらかったが、立ち直った私たちから被災地の皆さんにエールを送りたい」と話した。

 千夢酔は一升瓶が3100円(税込み)で販売される。高田酒店TEL0799・84・0078

(内田世紀)