チャック式の着物を開発した、いせや写真館の高鍋妙子さん(右)と西田晃三社長。「誰でも着物を楽しめるように」と願う=洲本市海岸通2
チャック式の着物を開発した、いせや写真館の高鍋妙子さん(右)と西田晃三社長。「誰でも着物を楽しめるように」と願う=洲本市海岸通2

 「あきらめを、かなうへ」。そんなコンセプトで作られた、脱ぎ着が簡単なチャック式の着物がある。いせや写真館(兵庫県洲本市海岸通2)でヘアメークと着付けを担当する高鍋妙子さん(66)が開発した「感動楽チャック着物」。七五三や成人式などで「障害のある人も小さい子どもも同じ着物が着られるようにしたい」。そんな思いに、全国から注文が寄せられている。(古田真央子)

■少ない負担感、かみ合わせ目立たず

 いせや写真館は着物などのレンタルをインターネットで受け付けている。ある時「車いすで着られる着物はないか」という問い合わせを受けたが、対応できる商品は見つけられなかったという。

 高鍋さん自身、数年前に体に障害がある女性を担当した際、振り袖の着付けの難しさを痛感。着慣れない子どもがぐずることもしばしばあり、悩みの種になっていた。

 そこで、縫製の腕もある高鍋さんは「自分で作ろう」と決意。一昨年から仕事の合間に試作を重ね、たどり着いたのが、チャック式のアイデアだった。

 こだわりは「普通の着物と変わらない見た目」だ。背中のチャックは着物と同色で、かみ合わせが目立たないコンシールファスナーを採用した。長じゅばんの襟は着物に縫い付けて、着崩れを防止。おはしょりは着丈に合わせて縫い上げ、手間を省いた。

 「座った状態でもきれいで、子どもが走り回っても大丈夫」と高鍋さん。負担感の少ない「楽」で美しい着物が出来上がった。

 昨年にレンタルを開始。成人用は5万円からで、子ども用は1万5千円から。西田晃三社長(47)によると、車いすの人に限らない「インクルーシブ(包摂的)デザイン」にすることでマーケットが広がり、「製造コストを半分ほどに抑えることができた」。利用者はすでに千件以上だという。

 高鍋さんは「『生きる望みができた』と喜ばれた。着物を着ることをあきらめていた人にも届くように、これからも頑張りたい」と笑顔で話す。

 いせや写真館TEL0799・24・0893