取材に応じる土師守さん=神戸市中央区(撮影・斎藤雅志)
取材に応じる土師守さん=神戸市中央区(撮影・斎藤雅志)

 土師守さんは報道各社の求めに、文書で手記を寄せた。全文は次の通り。

     ◇

 私たちの子供の命が奪われた事件から、今年で21年という年月が過ぎました。何年たとうとも、私たち家族の亡くなった子供に対する想いは変わることはありません。

 加害男性からは、退院後、昨年までは命日前に手紙が届いていましたが、今年は代理人の元にも届いていないようです。3年前に、加害男性が私たち被害者・遺族に何の断りも無く自分勝手な手記を出版しましたので、さすがにこのような状況で手紙を受け取ることについては非常に抵抗があり、一昨年、昨年は手紙の受け取りを断っています。しかし、私たちが手紙を受け取らないことと、加害男性が手紙を書かないということは別の問題だと思っています。手紙を書かないということは、事件と向き合うことをやめるということだと思います。私たちの子供が加害男性になぜ命を奪われなければいけなかったのか、という問題の解答を、事件後ずっと求め続けてきましたが、そのためにも、加害男性には事件と向き合い続けてほしいと思っています。

 今年6月3日をもって「あすの会」が解散することになりました。「あすの会」は2000年に、当時何の権利もなかった被害者の権利を確立するために、岡村弁護士を中心として設立されました。ヨーロッパ調査団の派遣や署名活動等の活動を行った結果、04年には犯罪被害者等基本法が成立しました。07年には被害者参加制度・損害賠償命令制度が成立し、08年には犯罪被害者等給付金法と少年法が改正され、少年審判において被害者の審判傍聴が可能になりました。10年には殺人事件における公訴時効が廃止されました。被害者問題においては、まだまだ課題は多く残されていますが、00年当時から考えますと、犯罪被害者を取り巻く環境は劇的に改善されたと思います。しかし、あすの会のほとんどのメンバーは、あすの会の活動で得られた成果の恩恵を受けていません。事件当時、自分たちが抱いた悔しい気持ちを考え、次の被害者が自分たちと同じ思いをしないようにという思いで頑張ってきたことについては、誇りに思っています。

 犯罪被害者問題については、まだまだ課題が多く残っていますが、これらのことについては、今後も私ができる範囲で訴えていきたいと思っています。

 平成30年5月24日

 土師 守