薄暮のひととき、明石の天文科学館がそびえる人丸山から海峡を望む。島影がかすみ、対岸に明かりがともり始める。大橋のメインケーブルが光に彩られ、ヘッドライトの往来が光の筋となる。はるか上空に流れる機影。海と空という悠久の自然を背景に文明の生んだ架橋と航空が響きあう。
関西空港、大阪(伊丹)空港、神戸空港。線で結ぶと二等辺三角形が浮かび上がる。トライアングルのように同一都市圏で3空港が一体運用されているのは、世界の主要都市では米ニューヨーク(JFK、ラガーディア、ニューアーク)と同じだ。関西3空港は今年、新時代を迎えた。神戸空港の国際化だ。チャーター便はいま、韓国、中国、台湾に飛び、2030年前後には定期便も運航される。
神戸から国境を越えてエアラインが飛んだこの時期、関西の人口は転入が転出を上回った。転出入の差は都市の活力の指標だ。1973年以降、転出超の傾向が続いてきたが、25年上期は前年同期比で6千人の改善を示した。半世紀ぶりの転入超、つまり社会増は時代の転換点を示す。
年齢別では20歳代で顕著で府県別では兵庫の伸びが最大だ。りそな総合研究所によると首都圏の不動産価格の高騰が背景にあるが、インバウンド(訪日客)、企業集積、交通インフラ、何より兵庫では住み心地の良さが要因にあるという。
風土を見つめた作家司馬遼太郎は神戸の雰囲気を「他人が何人であろうと、他の土地ほどは頓着しないという安気(あんき)さ」とつづった。新しい人々をひきつける魅力はそこに住み、働く人々が醸し出す生き生きとしたオープンなマインドなのだ。グローバルに踏み出した新時代の兵庫。海と空からどんな光跡を描くのだろう。(特別編集委員・加藤正文)
























