神戸市北区で2010年10月、高校2年の堤将太さん=当時(16)=を刺殺したとして、殺人罪で起訴された当時17歳の男(30)に対する裁判員裁判の第3回公判が9日、神戸地裁(丸田顕裁判長)で開かれ、男を精神鑑定した医師への尋問があった。弁護側は男に事件当時、精神疾患があったと主張しているが、医師は「精神障害はなく、統合失調症を装った詐病の可能性が高い」と述べた。
尋問で公立豊岡病院の三木寛隆医師=司法精神医学=は、事件当時に男にあったとされる幻聴や妄想は「(統合失調症の)病的な特徴を備えていない」と指摘。男の供述に関する特徴が、詐病者の具体的特徴(10項目)のうち、8項目で該当するとした。
その上で男が高校時代の交際相手だった少女や不良少年を憎み、不良に見えた堤さんに矛先を向けたことについて分析。不良少年の発する音や会話への過敏さは「確かにあった」が、「不安に感じた時などに誰でも生じるもの」と話した。
また、男は劣等感を補うための行動を繰り返す中で暴力に走りやすくなったと説明した。
一方、弁護側は男が過去に適応障害の診断を受けた点を質問したが、三木医師は「診断は間違いだ」と答えた。
男は起訴前後に行われた2度の精神鑑定で、いずれも刑事責任能力が問えるとする結果が出た。公判で弁護側は、善悪の判断能力などが著しく低い心神耗弱状態だったと主張している。