宝塚歌劇団宙組公演「ＨｉＧＨ＆ＬＯＷ　ＴＨＥ　ＰＲＥＱＵＥＬ」が２７日、兵庫県宝塚市栄町１、宝塚大劇場で開幕した。ＬＤＨ　ＪＡＰＡＮとコラボした話題作。激しいアクションを伴いながら、不良たちの抗争や友情を描く。宝塚の対極にある世界に思えるが、それが「宝塚バージョン」として見事に成立し、新機軸を打ち出した。

　ＥＸＩＬＥのＨＩＲＯの企画、総合プロデュースで２０１５年、テレビドラマに。そこから映画やゲームなども生まれた超人気シリーズの通称「ハイロー」は、ＥＸＩＬＥなどのメンバーや人気の若手俳優の出演でも話題となった。

　その宝塚版である今回は、これまでの映像作品群の前日譚（ＰＲＥＱＵＥＬ）という設定。架空の街を支配した伝説のチーム「ムゲン」が解散した後、五つのチームが台頭する、その誕生前夜に物語は展開する。

　かつて「ムゲン」に所属した山王連合会のコブラ（真風涼帆＝まかぜ・すずほ）は、あるパーティーで幼なじみのカナ（潤花＝じゅん・はな）と再会。余命半年と宣告されているカナは、やり残したことをかなえるため、コブラに街を一緒に巡ってほしいと頼む。だがある組織の策略でコブラは抗争に巻き込まれる。

　幕開け、大階段を使って五つのチームが登場。ファッション、音楽、ダンスでチームのカラーを際立たせる。女性を守るという使命に駆られるＲＯＣＫＹ（ロッキー、芹香斗亜＝せりか・とあ）、無名街の自警団リーダー、スモーキー（桜木みなと）、父は香具師という達磨一家の日向紀久（瑠風輝＝るかぜ・ひかる）、札付きの悪が集まる鬼邪高校の番長、村山良樹（鷹翔千空＝たかと・ちあき）。それぞれが体を張った丁寧な性格付けで、独自色を出していた。

　普通ではありえない白がドレスコードの仮面舞踏会も違和感なし。夏祭りの場面では和太鼓の演奏や番傘を使ったダンスにミラーボール。音楽もロック、ヒップホップ、ラテン調、ラップとバラエティーに富む。その音楽はオリジナルの楽曲を基に、打ち込みにオーケストラの生演奏を重ねた場面も多く、随所で宝塚らしさを発揮した。

　見どころはなんといっても素手での迫力ある殴り合い。映像ならＣＧを使いたくなるところだが、舞台ではそうはいかない。生身の人間でそれをどう見せるか。場面ごとにフォーメーションを変え、舞台を回転させ、ダンスも交えるなど、仕掛けに工夫が施されているので飽きさせない。またコブラがバイクの後ろにカナを乗せ、運転するシーンは映像をうまく使って走っているように見せた。

　コブラとカナのロマンスが１本の軸となり、男たちのプライドと意地が織りなすドラマを前へ前へと進めた。

　後半のショー「Ｃａｐｒｉｃｃｉｏｓａ！！－心のままに－」はイタリアを舞台に、伊達男たちが数々の名所を巡る。

　赤、緑、白のイタリアの三色旗に合わせた衣装で幕開け。耳なじみのいいサビのテーマ曲が心地いい。銀橋に男役が勢ぞろいしてのパフォーマンスで圧をかけたと思ったら、ベネチアの場面ではゴンドラが登場し、幻想的な夢の世界へこぎ出す。「ロミオとジュリエット」を思わせる中世のコスチュームもまとい、時空を超えてイタリアを飛び回る。

　真風の立ち居振る舞い、流し目と、醸し出す色気に見る者の視線はくぎ付け。「ハイロー」では苦味ばしった表情で落ち着いた演技を見せた芹香がうって変わって、はじけるダンスと歌ではつらつとしていたのも印象的だった。

　重厚な「ハイロー」とは様変わりの、「ザ・タカラヅカ」なレビューだった。

　９月２６日まで。東京宝塚劇場は１０月１５日～１１月２０日。（片岡達美）