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前山忠さんの「反戦」シリーズなどが並んだ会場=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
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前山忠さんの「反戦」シリーズなどが並んだ会場=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
安世鴻(アン・セホン)さんの写真「重重-消せない痕跡 アジアの日本軍性奴隷被害女性たち」も注目を集めた=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
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安世鴻(アン・セホン)さんの写真「重重-消せない痕跡 アジアの日本軍性奴隷被害女性たち」も注目を集めた=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
趙延修(チョ・ヨンス)さんが従軍慰安婦問題への憤りから描いた「償わなければならないこと」=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
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趙延修(チョ・ヨンス)さんが従軍慰安婦問題への憤りから描いた「償わなければならないこと」=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
表現の不自由展KOBEの会場周辺で警戒に当たる兵庫県警の警官ら=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
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表現の不自由展KOBEの会場周辺で警戒に当たる兵庫県警の警官ら=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
会場周辺では交通規制が敷かれた=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)
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会場周辺では交通規制が敷かれた=11日午後、神戸市内(撮影・吉田敦史)

 検閲や忖度によって公共施設で展示拒否された美術作品などを並べ、神戸市内で実施されていた「表現の不自由展KOBE」が11日、閉幕した。2日間で約760人が「歴史と女性の人権」をテーマにした作品群を鑑賞し、反対派の街宣車が会場周辺で抗議の声を上げるなどしたが、大きな混乱はなかった。

 表現の不自由展は2015年から、市民らの実行委員会が各地で妨害や脅迫を受けながらも続けている。

 今回の神戸展は「天皇制」「従軍慰安婦」に関連した作品を紹介、表現の自由と平和の尊さを訴える内容とした。国内外の16人が彫刻や絵画、写真など約25点を寄せ、原爆や東京電力福島第1原発事故を取り上げた作品もみられた。

 韓国の彫刻家キム・ソギョンさんとキム・ウンソンさんが、旧日本軍の従軍慰安婦問題を題材に手掛けた「平和の少女像」は、隣に椅子があり、観客が座って像に触れられる。

 像の背中をなでたという兵庫県姫路市の女性(61)は「存在感があって鼓動が聞こえてきそう。(被害に遭った)少女の思いを感じて胸が詰まった。性暴力は今も絶えていない」。表現が制限された過去の事例の年表に「随分前から繰り返されてきたと分かった。茨木のり子さんの詩が訴えるように、自分の感受性は大事に守りたい」と語った。

 大阪市の女性会社員(43)は「日本の戦争加害だけでなく、被害も伝え、祈りなど多層的な意味が込められた作品が多い。アートは立ち止まって考える入り口になる。見て思うことも含めて表現の自由。表現を嫌悪しても『展示するな』というのは違う」とした。

 兵庫県立高校の男性教諭(49)は「『戦争はしたらいかん』と伝わる」。中国出身で京都市内の大学院で学ぶ女性(23)は「自由に表現するために闘っていて感動した」と話した。

 会場の空間が広く、作家からも「一つ一つの作品にちゃんと向き合って鑑賞してもらえる」と評価する声が聞かれた。

 神戸展は平穏に鑑賞できる環境を確保するため、完全予約制で場所は非公開とした。しかし周辺では街宣車が大音量で開催反対を訴え、兵庫県警が交通規制するなど警戒に当たった。来場者の手荷物検査などの措置も取られた。

 展示の運営にはボランティアスタッフの市民ら100人余りが参加した。実行委員の男性(54)は「静かに見られる環境を守り、表現の自由や民主主義を考える場を提供できた。神戸のまちのためになるはず」と話した。(小林伸哉)

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