1枚のモノクロ写真に、正装した男性4人が、ピアノや管楽器と共に写る。日本初のプロのジャズバンド「ラフィング・スターズ(笑う星々)」だ。
1923(大正12)年4月、バイオリン奏者で「日本のジャズの父」といわれる井田一郎が、神戸で結成し、市内のホテルなどで演奏を披露した。ここから神戸が日本のジャズ発祥の地とされる。
江戸末期に開港し、外国文化がいち早く流入した街では、19年に旧神戸オリエンタルホテルでフィリピン人楽団がジャズを奏でるなど、土壌があった。
井田は「大正末期、宝塚少女歌劇のオーケストラに入団しながら、自身のジャズ思考ゆえに他の楽団員に排斥され、宝塚を飛び出したという」(「タカラヅカ・ベルエポック2」より)。そんな井田が求めた新天地が神戸だった。
「ラフィング-」について、音楽学が専門の輪島裕介・大阪大教授(48)=兵庫県猪名川町=は「欧州のクラシックのような芸術的音楽と異なり、米国の大衆的な娯楽音楽『ジャズ』を日本で本格的に始めたという、音楽史的に重要な出来事」と位置付ける。
ジャズは19世紀末から20世紀初め、米国南部のニューオーリンズで、黒人のブルース、ラグタイムなどが、白人の音楽と融合してできた。北米航路を往復した楽団員が日本への橋渡し役といい、井田も外国航路の楽団出身だった。
「ラフィング-」が誕生した23年、関東大震災が9月に発生。東京などのジャズ奏者らが関西へ大量移住する。大阪市のダンスホールがにぎわうが、昭和初期に営業が禁止され、阪神間に中心が移る。やがて震災復興が進むと、奏者らは東京へ戻った。戦時色が濃くなる40年以降、ダンスホールは閉鎖。敵性音楽として禁止された。
戦後ジャズが復活したのは、進駐軍キャンプからだった。NHKのラジオが米軍軍楽隊によるジャズを放送した。52年に開局したラジオ関西(当時はラジオ神戸)は全国初の電話リクエスト番組「電リク」を開始、ジャズや映画音楽などを流し聴衆の心をとらえた。
日本学校ジャズ教育協会関西本部の日下雄介理事長(81)=神戸市中央区=も「中学生の頃、ラジ関やNHKでジャズに憧れ、興味を持った」と振り返る。
進駐軍の撤収が進んだ50年代以降、演奏の場は、当時「大人の社交場」だったナイトクラブやキャバレーに移った。神戸でも「紅馬車」などのキャバレーが一つの癒やしの場となった。
日下さんは、私立高教諭を勤める傍ら「進駐軍から流れてきたジャズの楽譜を学びたくてキャバレーの楽団に入り、サックスを吹いていた」。「別れのブルース」で知られる淡谷のり子らの伴奏をするなど、「有名なミュージシャンが頻繁に訪れ、神戸の夜の街は華やかで刺激的だった」。
一方、神戸・三宮には53年にジャズ喫茶「JAVA」、69年にジャズライブレストラン「ソネ」などがオープン、レコードをかけたり、生演奏をしたりと、ジャズ文化の拠点になった。そして80年代のイベントにつながっていく。
輪島教授は、神戸のジャズ文化について「音楽産業としての中心地は東京だが、港町らしく外国文化を受け入れ、ラジオや店、イベントなどを通じ、街の音として根付いているのがいい」と話す。
◇
来年4月、神戸のジャズ発祥から100年を迎える。なぜこの街でジャズが時代を超えて響き、愛されたのか。「歴史編」では奏者や店、イベント主催者らを訪ね、その魂に迫る。(金井恒幸)
◇ ◇
■映画で出合い、夢中に
ジャズって気になるけど、何から入ればいいのか…。そう思う人には、映画はどうだろう。
サックス奏者日下雄介さんは、ラジオをきっかけにジャズに憧れたが、映画音楽でのめり込んだ。ノリのいいダンス音楽でもある「スイング」全盛時代のビッグバンドを描いた「ベニイ・グッドマン物語」や「グレン・ミラー物語」などに、夢中になったという。
演奏にしびれ、高校の授業後、夕日を浴びながら兵庫区の運河で楽器を奏でていた。その後、母校で高校教師をしながら、キャバレーの楽団員としても活躍し、高校時代の夢を実現する。
記者は、取材をきっかけに「ベニイ・グッドマン物語」を見た。クラシックの殿堂だった米ニューヨークのカーネギーホールで、ジャズが初めて演奏される場面が印象的だ。強烈なドラムソロ、そして管楽器のソロが軽やかに続く。名曲「シング・シング・シング」のリズミカルな曲に聴衆は体を揺らし、文字通り会場全体がスイングしていた。入り口にはお薦めの1本だ。
■神戸とジャズの100年
1868年 開港。居留地が開設され、外国文化が流入
1923年 4月、井田一郎が日本初のプロバンド「ラフィング・スターズ」を結成。当時の神戸オリエンタルホテルなどで演奏する
24年 「ソシアル」「エンパイア」など数軒のダンスホールができる。40年、戦時下のため全国で一斉に閉鎖
45年 終戦。ジャズ演奏が解禁。米軍の進駐軍キャンプなどから広がる
52年 ラジオ神戸(現ラジオ関西)が開局、日本初の電話リクエスト番組「電リク」を放送開始。ジャズや映画音楽などを届ける
53年 ジャズ喫茶「JAVA」開業(現存最古)
新開地の「聚楽館」で、ルイ・アームストロング(愛称・サッチモ)が演奏
69年 ジャズライブレストラン「ソネ」開業
71年 神戸村野工業高校が日本初の高校ジャズバンドを結成。顧問は日下雄介さん
82年 第1回「神戸ジャズストリート」が開催される
95年 阪神・淡路大震災。多くのミュージシャンが復興支援。ジャズストリートで初のパレードを行い、被災者を勇気づける
2000年 新開地で初の「ジャズヴォーカルクィーンコンテスト」開催
05年 NHK神戸放送局がジャズ番組を開始
08年 ジャズ発祥の地、米・ニューオーリンズのミュージシャンを神戸に招き、日本人演奏家らと交流
14年 「ジャズの街神戸」推進協議会が発足。4月4日を「神戸ジャズデー」に決める
15年 ラジオ関西で新ジャズ番組開始
16年 「神戸ユースジャズオーケストラ」が結成
23年 日本初のプロジャズ演奏から100年
※「ジャズの街神戸」推進協議会などへの取材を基に作成

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