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映画の一場面((c)2022「あちらにいる鬼」製作委員会)
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映画の一場面((c)2022「あちらにいる鬼」製作委員会)
寺島しのぶ
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寺島しのぶ
「人間のこっけいさのようなものもにじみ出ている。そんな点にも注目して」と話す寺島しのぶ(前)と豊川悦司=大阪市内(撮影・中西幸大)
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「人間のこっけいさのようなものもにじみ出ている。そんな点にも注目して」と話す寺島しのぶ(前)と豊川悦司=大阪市内(撮影・中西幸大)
豊川悦司
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豊川悦司

 2021年11月、99歳で亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴と、同じく作家の井上光晴、その妻。この3人の奇妙で複雑な人間関係をあぶりだす映画「あちらにいる鬼」が11日から公開される。井上の長女である作家、井上荒野の同名小説が原作。瀬戸内がモデルのみはるを演じる寺島しのぶと、井上光晴を思わせる白木篤郎役、豊川悦司が作品への思いを語った。(片岡達美)

 講演旅行に同行したみはると篤郎は、それぞれパートナーや妻子がいるのに男女の仲に。みはるの元に通う篤郎の言葉はうそだらけで、家では妻子を愛し、みはる以外の女の存在もにおわせる。互いに才能を認めつつ、男女としては出口のない関係を続ける2人。7年がたち、すべてのしがらみを断ち切るようにみはるは「出家する」と告げる。

 寂聴を演じるための「役作りや準備はしなかった」と寺島。ただ多くの人が知る晩年の姿とは違う出家前、晴美の名で書いた小説をすべて読み、「体の中に落とし込み、ワクワクしながら現場に臨んだ」という。

 一方、豊川は「篤郎はやりたい放題。現代のモラルからすると、特に女性の観客からは総スカンを食らうかも」と苦笑い。「でも、篤郎という男の存在の向こう側に見え隠れする人間性のようなものを表現したかった」と振り返る。

 これまでに共演も多い豊川に対し寺島は「こうしてほしいな、こうしたいなと思って演じなくても、できあがってみると豊川さんとのシーンはすてきに仕上がっている。それが快感」と全幅の信頼を寄せる。

 みはるが剃髪(ていはつ)する前夜、一緒に風呂に入り、篤郎がみはるの髪を洗う。「明日にはなくなってしまう髪のその向こうにある痛みを2人は共有できている。映画的なシーンで気に入っている」と豊川。ところが本当に髪をそった寺島は「そっている間に何かドラマチックな感情が起こるかと思ったけれど、通過点でしかなかった」と意外な答え。

 みはると篤郎、その妻の理屈では割り切れない関係を通じ、愛情と人間の業をあぶりだす本作を、2人は「いつもの自分とは違うアングルから見てほしい」と話している。

 映画「あちらにいる鬼」はキノシネマ神戸国際などで上映。

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