文化

  • 印刷
12月にインドネシアの首都ジャカルタで開催された、ヘッド・イン・ザ・クラウズのメインステージ(公式提供=PhotoByNareend)
拡大
12月にインドネシアの首都ジャカルタで開催された、ヘッド・イン・ザ・クラウズのメインステージ(公式提供=PhotoByNareend)
津田昌太朗さん
拡大
津田昌太朗さん

 カタールで開催されたサッカー・ワールドカップは、マスク姿の観客がほとんど見当たらなかったが、欧米の音楽フェスも、今年は新型コロナウイルス禍前と同じような様相を見せたという。現地で取材した音楽フェス情報サイト「Festival Life(フェスティバルライフ)」編集長の津田昌太朗さん(36)=兵庫県姫路市出身=に、最新の海外フェス動向について寄稿してもらった。

     ◇

 コロナ禍で壊滅的な影響を受けた音楽フェスシーンだが、2022年は完全復活とはいえないものの、希望を持てた1年になった。本連載でも取り上げたフジロック・フェスティバルやサマーソニックといった、いわゆる国内四大フェスはすべて開催(8月開催のロック・イン・ジャパン・フェスティバルのみ台風の影響で最終日が中止)され、筆者が運営している音楽フェス情報サイトでも、全国津々浦々400以上のフェス情報を掲載し、その多くが開催された。

 個人としても、春以降はほぼ毎週末、フェスに参加することができたが、昨年との一番の変化は海外フェス取材に行けるようになったことだ。春にはアメリカ、ヨーロッパ、秋以降はアジアも回り、各国の状況を見てきた。

 ■コロナ対策に違い

 今年の前半といえば、まだ日本のフェスがさまざまな制約の中で開催されていたタイミングだったが、4月にアメリカで開催されたコーチェラは、マスク着用義務なし、ワクチン接種証明書・陰性証明書の不要を早々に宣言。さらに6月に参加したグラストンベリー(イギリス)はほぼ何の制限もなく開催され、10万人以上の参加者の中からマスクをしている人を見つけるのが難しく、コロナ禍以前との変化を感じる機会の方が少なかった。

 一方、アジアは少し状況が違った。直近では12月にインドネシアの首都ジャカルタで開催されたヘッド・イン・ザ・クラウズというフェス(アメリカでは2018年から開催。同名でアジアに初上陸)に参加したが、比較的多くの人が気温30度を超す環境下でもマスクを着用してフェスを楽しんでいた。

 宗教上の理由もあるが、会場内のアルコール販売もなかった。このように、日本を含むアジアのフェスは、相対的に慎重なリスタートを切っているのが現状だ。

 ちなみに、ヘッド・イン・ザ・クラウズは、アジア系のアーティストを集めたレーベル/クリエーティブ集団88risingが主催するフェスで、アジア系アーティストで初めて全米R&B/Hip Hopチャート1位を記録したJOJI、韓国のボーイズグループGOT7出身のジャクソン・ワンらがラインアップ。日本からは初の海外ライブとなったYOASOBIや新しい学校のリーダーズが出演し、日本語での歓声やアンコールが起こるなど、現地のファンの高い熱量を感じることができた。

 ■アジアの時代へ

 これまでは「海外フェス」といえば、欧米で開催されるフェスをイメージすることが多かったが、昨今アジアでも音楽フェスシーンが盛り上がりを見せている。東南アジアは若者の人口比率も高く、新しいフェスが次々と生まれているし、23年にはロラパルーザやローリング・ラウドといった欧米の人気フェスが立て続けにアジア開催を発表。

 日本に関していえば、アジア各国よりもフェス文化が成熟しているものの、ウクライナ危機による石油をはじめとした物価上昇や円安による来日アーティスト招聘の価格高騰といった背景もあり、日本をスキップして他のアジアのフェスに欧米のアーティストが出演するというようなことも増えている。

 また、前述のYOASOBIのように日本のアーティストがアジアに進出する傾向も加速している。K-POPの躍進やシティポップ人気なども相まって、アジアの音楽が世界から注目され始めて久しいが、音楽フェスも今アジアがおもしろい。

【つだ・しょうたろう】1986年姫路市生まれ。兵庫県立姫路西高校、慶応義塾大学卒。博報堂勤務を経て「Festival Life」編集長。これまでに国内外約500カ所のフェスに足を運んだ。著書に「The World Festival Guide(ザ・ワールド・フェスティバル・ガイド)」

文化フェス主義!
文化の最新
もっと見る
 

天気(9月7日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 20%

  • 37℃
  • ---℃
  • 40%

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 36℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ