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「神戸で頑張っているミュージシャンをリスペクトすることが大事」と語る小曽根真さん=堺市、フェニーチェ堺
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「神戸で頑張っているミュージシャンをリスペクトすることが大事」と語る小曽根真さん=堺市、フェニーチェ堺
1971年に開催された神戸まつりでオルガンを演奏する幼少期の小曽根真さん=神戸市内(本人提供)
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1971年に開催された神戸まつりでオルガンを演奏する幼少期の小曽根真さん=神戸市内(本人提供)

■ディキシーの喜び原点に

 ジャズとクラシックの境界を軽やかに横断し、世界中のファンを魅了してやまない。神戸出身のピアニスト小曽根真さん(61)の揺るぎない音楽観は「楽しむこと」だという。原体験は、戦後の神戸ジャズをけん引してきたジャズピアノ、オルガン奏者の父・実さん(故人)が奏でるディキシーランド。古典的だが、底抜けに明るく、思わず口ずさみたくなる音楽だ。

 小曽根さんが幼い頃、実さんは人気テレビ番組「11PM(イレブン・ピーエム)」に出演し、週末にはトランペッター右近雅夫さんが率いる「オリジナル・ディキシーランド・ハートウォーマーズ」で活動していた。

 おやじの練習に連れて行かれてね。メンバーでディキシーをドンチャカ合わせるんだけど、聴いていて本当に楽しかった。家に帰っても茶わんをチンチキたたいて。僕の音楽がどれだけ複雑になっても、あの喜びだけは絶対になくさない、いやなくせない。

 5歳の頃から電子オルガンを弾き、「天才」と呼ばれた。12歳でオスカー・ピーターソンのソロピアノに衝撃を受け、ジャズピアニストを志す。当時から神戸・北野のライブレストラン「ソネ」などで演奏し、数々のプレーヤーと交流。中でも大御所クラリネット奏者北村英治さん(93)は今でも協演する特別な存在だ。

 初めてソネに行った時は、すてきな世界を見て「早く大人になりたい」と思いました。北村さんはおやじが経営するクラブによく来てくださった。高校生の時にはもう一緒に演奏させていただき、ずっと褒めて伸ばしていただきましたね。北村さんは僕のロールモデル。ああいう年の取り方をしたい。原色しか使わないディキシーという音楽を、北村さんは93年の人生全てを背負って吹くんです。

 神戸に深い愛を寄せ続ける小曽根さん。ただ、阪神・淡路大震災については、多くを語ってこなかった。

 震災の時はハワイにいたんです。ホテルでテレビを見ていたら、CNNのニュースが急に入ってきた。阪神高速がひっくり返っているのを見て、家に電話し、すぐ帰国しました。

 実家も全壊しショックやったけど、仕方ないと思いました。自分は命がある。でも、目の前で身内や友達を亡くした人たちがいる。僕らは想像しかできない。震災を直接経験していないのに何を語れるか。震災のインタビューだけは本当に怖かったし、いまだにやっぱりあまり話せない。

 でも、復興のお手伝いはなんでもやろうと。せっかくピアノが弾けるんやから、支援コンサートには出演してきました。あとはラジオ。当時、Kiss FMで番組をやっていたんです。早く日常を取り戻そうと3月から番組を再開しました。テーマソングが流れた瞬間、どれだけファクスが鳴ったことか。局内には「不謹慎」と反対意見もあったけど、やって良かった。

 4月で発祥から100年を迎える神戸ジャズ。自身の音楽のルーツでもあるその行く末をどう見るか。

 神戸のジャズシーンに貢献してきたローカルなミュージシャンに感謝しスポットを当てること、同時にミュージシャンがもっと音楽のレベルを上げること。この相乗効果が大事では。若い人たちに「こんなに楽しい音楽があること知らんやろ?」っていう、格好良い大人がいたらいい。良い音楽があれば人は集まってきますよ。

     ◇     ◇

■北野で育んだ「ええかっこしい」

 還暦を記念し、小曽根真さんが2021年春に発売したアルバム「OZONE60」には、神戸・北野の街をイメージした曲「ストラッティン・イン・キタノ」が収録されている。

 ストラッティンは、「気取って歩く」という意味。小曽根さんは「僕もそうやから分かるけど、神戸の人って『ええかっこしい』が多いじゃないですか。神戸ブランドを背負っているというか。そんなイメージも込めた」と冗談めかして笑う。

 「自分の音楽の原点」というディキシーランドをベースに、軽やかでしゃれっ気を感じさせるメロディーが、まさに北野の瀟洒(しょうしゃ)な雰囲気にぴったりだ。

 北野のジャズライブレストラン「ソネ」には中学生の時から出入りしていた。「丸坊主で、コーラを飲みながらピアノを弾かせてもらった」と懐かしむ。現オーナーの曽根辰夫さんが率いていたソネトリオを挙げ「あの時代の大人は格好良かった」と回想。「ソネには本当に育ててもらった」と感謝する。

【おぞね・まこと】1961年、神戸市中央区生まれ。83年にバークリー音楽大ジャズ作・編曲科を首席で卒業し、全世界デビュー。ソロやビッグバンドで活躍し、ゲイリー・バートン、チック・コリアら世界的なプレーヤーと協演。近年、クラシックにも取り組む。

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