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石や鉄や綿。素材の組み合わせで、ものの存在感が際立つ=兵庫県立美術館
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石や鉄や綿。素材の組み合わせで、ものの存在感が際立つ=兵庫県立美術館
「関係項-星の影」(2014/2022年)の展示風景=兵庫県立美術館
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「関係項-星の影」(2014/2022年)の展示風景=兵庫県立美術館
ピンク色の蛍光塗料で描かれた「風景Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」(1968/2015年)=兵庫県立美術館
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ピンク色の蛍光塗料で描かれた「風景Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」(1968/2015年)=兵庫県立美術館
自作の絵画「応答」(2021年)の前に立つ李禹煥さん=兵庫県立美術館
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自作の絵画「応答」(2021年)の前に立つ李禹煥さん=兵庫県立美術館
「現象と知覚B 改題 関係項」(1968/2022年)の前で李禹煥さんが解説した=兵庫県立美術館
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「現象と知覚B 改題 関係項」(1968/2022年)の前で李禹煥さんが解説した=兵庫県立美術館

 石や金属は素材の特質をむき出しにしたまま、静かに置かれている。絵画は簡潔な点や線、余白から成り、緊張感を発する。「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リウファン)さんの個展が、兵庫県立美術館(神戸市中央区)で開かれている。西日本で初の大規模回顧展で、1960年代から最新作まで立体作品や絵画など約60点が並ぶ。寡黙な作品群は展示空間や見る者と呼応し、無限のエネルギーがみなぎるようだ。

 石は李さんが多用する特別な素材だ。「自然石は気の遠くなるような時間の塊であると同時に、また規定し難い空間的な存在でもある」(著書「余白の芸術」より)と捉えてきた。

 石と人工物の鉄、ゴム、ガラスなど相反するような性質の素材を組み合わせる。できる限り手つかずのまま、絶妙な配置で立体作品に仕上げて、見る者に新鮮な感覚を呼び起こす。

 制作行為を最小限に抑制する一方、まわりの空間を受け入れて生かし、最大限に世界と関わろうとする。そのミニマリズムは「作品が生き生きすることより、空間が生き生きしてほしいところの方法である」(同)という。

     ◇

 李さんは1936年、韓国南部の慶尚南道(キョンサンナムド)で生まれた。幼少期に絵や書を学び、56年にソウルで美術大学に入学。58年、日本大学に編入して哲学を学んだ。60年代には韓国の軍事政権を批判し、朝鮮半島の南北統一運動に関わった。

 ものの在りようや相互の関係性に意識を向かわせる「もの派」(60年代後半~)について、論考を書いて理論形成に貢献。2000年ごろから世界各地で個展が開かれ、香川県の直島や韓国、フランスに個人の美術館が建っている。

     ◇

 石が二つ向かい合う「関係項-星の影」は、電球の光に照らされ、石に寄り添うように影ができていた。作品を解説する李さんは「影は心。内心はどうなっているか、分からない」とつぶやいた。静かに思索と内省にいざなってくれる。

 初期は視覚の不確かさや錯視効果に関心を寄せて制作しており、ピンク色の蛍光塗料で描かれた絵画は鮮烈な印象を残す。ガラスに石を乗せて激しく割った「現象と知覚B 改題 関係項」は、もともと1968年に生まれた作品で、全共闘運動などが起きた時代の精神を象徴するようだ。

 建築家安藤忠雄さんが手がけた兵庫県美の空間と作品が引き立て合う。らせん階段に糸が垂れ下がり、奥底の鏡に反射して無限を思わせる作品が登場する。

 70年代に点や線を反復して描き、色が次第にかすれる絵画は、時間の流れを思わせる。80年代に筆を持つ手が震えるほど体調を崩して、新境地を探る中で画風が変わり、余白を意識した絵画が生まれた。本展では、その歩みと美をじっくりと堪能できる。

 芸術作品における余白とは-。「自己と他者との出会いによって開く出来事の空間を指すのである」(著書「余白の芸術」より)とする李さん。

 本展の記者説明会で穏やかに語った。「人間はもう少し他者、外部、宇宙、自然との共存を考えてやっていかないといけない。僕の仕事がその暗示、ヒントになればと考えています」

     ◇

 2月12日まで。月曜休館(ただし、1月9日は開館し、翌10日は休館)。一般1600円、高校生以下無料など。兵庫県立美術館TEL078・262・1011

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