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時代劇への熱い思いを語った(左から)大友啓史監督、木村拓哉さん、綾瀬はるかさん=京都市内
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時代劇への熱い思いを語った(左から)大友啓史監督、木村拓哉さん、綾瀬はるかさん=京都市内
「レジェンド&バタフライ」の一場面((c)2023「THE LEGEND&BUTTERFLY」製作委員会)
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「レジェンド&バタフライ」の一場面((c)2023「THE LEGEND&BUTTERFLY」製作委員会)
公開直前、主演作「レジェンド&バタフライ」への思いを語る木村拓哉さん=京都市内
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公開直前、主演作「レジェンド&バタフライ」への思いを語る木村拓哉さん=京都市内
公開直前、主演作「レジェンド&バタフライ」への思いを語る木村拓哉さん=京都市内
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公開直前、主演作「レジェンド&バタフライ」への思いを語る木村拓哉さん=京都市内

 木村拓哉さんと綾瀬はるかさんのコンビで織田信長と妻、濃姫の約30年にわたる愛の軌跡を描いた映画「レジェンド&バタフライ」が公開されている。数々の時代劇を手がけてきた東映の創立70周年を記念し、制作費20億円をかけて完成した。公開3日間の興行収入が4・9億円、37万人動員で一位と出足は好調だ。衰退がいわれて久しい時代劇の新機軸を打ち出せるか。

 政略結婚で結ばれた信長と濃姫。そりの合わない2人だが、徐々に引かれ合い、協力して天下取りを目指す。篠山城跡(兵庫県丹波篠山市)をはじめ、県内複数の場所でロケが行われた。

■「忠臣蔵」知らず

 時代劇は製作本数が激減したまま今日に至っている。10年ほど前、知り合いの大学教授が「『忠臣蔵』と言っても、今の学生には通じない」とこぼすのを聞いて驚いたが、考えてみれば当然のこと。

 かつては年の瀬になればテレビが往年の「忠臣蔵」映画を放送していた。東映ならば片岡千恵蔵・市川右太衛門の両御大の出演作。大映「忠臣蔵」には長谷川一夫、市川雷蔵が出ていた。テレビ各局が新作「忠臣蔵」を作り、新企画に困れば「忠臣蔵」をリメークすればいいと言われたものだ。

 さかのぼれば江戸時代から歌舞伎、文楽の「仮名手本忠臣蔵」は大定番だった。主君に忠誠を尽くし、正義を貫く物語は日本人のメンタリティーをつくったといわれるほど。それが映画やテレビから、ほとんど姿を消した。

■天下取りに共感

 ところが信長はどうか。現在放送中のNHK大河ドラマ「どうする家康」にも岡田准一さん演じる信長が登場。もちろん秀吉も、「レジェバタ」(と今回の映画は略称するそうだ)と大河の両方に顔を出す。映画でも、大河ドラマでも、戦国の三英傑、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の人気は時代劇衰退の中でも続いているようだ。時代劇の中に占めるこの3人の登場頻度は以前より増しているようにも思える。

 単純化すると、忠義とかあだ討ちの物語が決定的に時代遅れになる一方、天下取りの物語は今でも日本人の共感を呼ぶのだろう。特にビジネスマン向けの雑誌には三英傑がよく登場する。彼らの生き方からビジネス社会での競争やリーダーシップを学び取ろうと特集記事が呼びかける。

■想像力

 ところで「レジェバタ」のキムタク信長と大河の岡田信長のキャラクターが正反対、と言わないまでも、かなりかけ離れているのが面白い。脚本は両作とも人気の古沢(こざわ)良太さんが担っているにもかかわらずだ。

 キムタク信長は人間くさく、迷い、悩む。大河の方でその位置にあるのは松本潤さんの家康だ。世間を知らない若大将が家臣に支えられて成長していく。若い視聴者にも共感しやすいキャラクターといえそうだ。

 一方、家康と同盟を結ぶ岡田信長は冷酷で、超人的能力を発揮する。信長は「第六天魔王」を自称したという史実があり、大河もそうしたイメージを踏襲しているように見える。信長の史料の多くは後世に書かれたもの。脚本家の想像力で同じ人物をここまで対照的に描き分けられるのは時代劇だからこそだろう。

 今回の「レジェバタ」の人気が時代劇人気復活の後押しとなることを映画関係者は期待している。公開直前、多くのシーンを撮影した京都の試写会場を訪れた木村さんは、東映京都撮影所のスタッフの仕事ぶりをたたえた。大友啓史監督は過去の時代劇を200本以上見て、その熱量に圧倒されたそうで、「令和の新しい時代劇を作る」という意気込みで撮影に臨んだと明かした。

 今をときめく俳優と監督を奮起させた時代劇。ここから新たな潮流が生まれるか、期待したい。

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