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出演者たち。双日をはじめ鈴木商店ゆかりの多くの企業が公演をバックアップしている
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出演者たち。双日をはじめ鈴木商店ゆかりの多くの企業が公演をバックアップしている
「脚本に行き詰まった時に神戸を訪れ、鈴木商店を取り巻く当時の雰囲気を感じることができた」と語る村田裕子=神戸新聞社
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「脚本に行き詰まった時に神戸を訪れ、鈴木商店を取り巻く当時の雰囲気を感じることができた」と語る村田裕子=神戸新聞社

 神戸に拠点を置き、明治から大正にかけて日本一の商社となった鈴木商店を題材にした群像劇「彼(か)の男 十字路に身を置かんとす」(神戸新聞社後援)が4月に神戸と東京で上演される。世界を股にかけて大商(おおあきな)いに挑んだ男たちの情熱、執念、苦悩を、スピード感あふれるせりふの応酬で表現する。2018年に東京での初演が好評を博し、20年の神戸公演が決まったが、コロナ禍で中止に。今回、神戸で待望の初舞台となる。

 東京の劇団LiveUpCapsules(ライブアップカプセルズ)が上演。作、演出の村田裕子(44)は、日本の近現代史を題材にした作品を発表し続けている。作家城山三郎の「鼠(ねずみ)」で鈴木商店を知った。「日本を背負って仕事をしているという使命感と、社員のだれもが『俺が俺が』とぐいぐい前進する熱量に引かれた」と話す。

 鈴木商店は1874(明治7)年、神戸港近くで砂糖の輸入商として創業した。港の発展と歩調を合わせて成長し、製鉄、造船、セルロイドなど60を超える事業を展開。昭和初期の金融恐慌で破綻したが、流れをくむ双日、帝人、神戸製鋼所、サッポロビール、ダイセルなど多くの企業は今も健在だ。

 舞台の主人公は、経営の采配を振るった大番頭の金子直吉。このほか、金子と二人三脚で会社を支えた本店支配人の西川文蔵、ロンドン支店長として活躍した高畑誠一、神戸製鋼所の事実上の創業者である田宮嘉右衛門(かえもん)らを軸に、三井、三菱の財閥を追い抜こうと突き進んだ大正期を描く。米の買い占めを疑われ、焼き打ちされた事件にも触れる。

 「日本にスズキあり」と言われるまでに飛躍した背景には、第1次世界大戦による世界的な物資の需要増がある。一方、民衆は空前の物価高に苦しんでいた。ロシアによるウクライナ侵攻や物価高騰など現代と重なる部分が多く、出演者らは「今、鈴木商店を演じる意味は何か」を考えることから再演の準備を始めた。

 「伝えたいのは、大勢の若者が時代の先駆けとなって失敗を恐れずに行動したこと。金子らが海の向こうに世界を見ていた神戸で、当時の人々のエネルギーを感じてほしい」と村田。役者たちの稽古も熱を帯びてきた。

 【東京】4月10-16日、新宿区のシアターサンモール【神戸】20-23日、神戸市中央区新港町の神戸ポートオアシス。チケットは前売り、当日とも4千円。J-Stage NaviTEL03・6672・2421

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