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「商業映画の制約のない、解き放たれた映画」と石井岳龍監督。既に次作が待機中で、本格的に監督業に復帰する=元町映画館
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「商業映画の制約のない、解き放たれた映画」と石井岳龍監督。既に次作が待機中で、本格的に監督業に復帰する=元町映画館
「自分革命映画闘争」より、黒い軍団の登場(上)と学生による劇中の撮影シーン(C)ISHII GAKURYU
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「自分革命映画闘争」より、黒い軍団の登場(上)と学生による劇中の撮影シーン(C)ISHII GAKURYU

 神戸芸術工科大(神戸市西区)の映画コースを2006年の創設時から率いてきた石井岳龍(がくりゅう)(旧名・聰亙(そうご))監督(66)の最新作「自分革命映画闘争」が、18日から神戸で先行公開される。この日は同大の卒業式で、石井監督も教授を退官。「せめて一つは自分のできることを残したい」という強い思いで、キャストもスタッフも主な撮影場所もオール芸工大で自主製作した作品だけに「最終的な映画の完成者として、地元の方にも映画館で見てほしい」と呼びかける。

 石井監督は福岡・博多出身。日大在学中の8ミリ作品「高校大パニック」が日活でリメーク、16ミリの卒業制作「狂い咲きサンダーロード」が東映系で劇場公開され、自主映画出身監督の先駆者となった。あたかもその頃のような「切迫した思いに駆られて作った」のが、上映時間2時間45分の今回の作品だ。

 劇映画だが、石井監督をはじめ、同僚や教え子が本人役で登場。商業映画のようにスターの出演が望めない中、「みんなでオンリーワンの作品にするには、まず自分が出ると言わないとだめだと思った。捨て身ですね」と笑う。

 物語は、石井監督がいきなり謎の失踪を遂げ、大学を大混乱に陥れるシーンで幕開け。パソコンに残された「自分革命闘争ワーク」を体験することで、学生たちの意識は研ぎ澄まされていくが、石井監督を襲撃し命を奪った「黒い軍団」が彼らにも迫る-。

 石井監督ならではのインパクトのあるビジュアルもありつつ、「光と闇、生と死のように対で動いているものを撮ることができた」。映画は動きと変化だというのが持論で、「目に見えない心の動きや感情のひだも撮れる。あらゆる動きの可能性をどれだけ入れられるかに挑戦した」という。

 クランクインは2020年の春休み。当時の4年生の卒業前に撮り終える予定だったが、新型コロナウイルス禍で撮影は中断した。それも映画では逆手に取り、製作のピンチに直面する監督自身の内面を描くパートを、コロナ禍のリアルな撮影現場に変更。「すごくリアリティーがあり、迫力が出た」と振り返る。

 同時にその場面の「諦めたらそこで終わる」という心の声は、「本当の本音で自分が何かを言えるとしたらそれだけ」という後進へのメッセージだ。「懸命に打ち込む姿は美しく、その真実に感情は揺さぶられる。今回、初めて人生を映すことができたんじゃないかという気がしています」

 コロナ禍で一層強く感じた同調圧力や社会の分断などへの危機感も反映する。公開待機中にはロシアがウクライナに侵攻。「黒い軍団は忍び寄るいろんなものの暗喩で、自分の心の中の黒い部分かもしれない。自分にも関わっていると自覚して、自分を変えていくこと。大げさなタイトルは、その決意表明です」

 元町映画館(元町4丁目商店街内)で18~24日午後7時10分(21日を除き監督来場予定)、25~31日正午から。一般通常1700円など。同館TEL078・366・2636

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「自分革命映画闘争」公開拡大へクラファン

 「自分革命映画闘争」は、石井岳龍監督が配給・宣伝にまでタッチする初めての作品だ。「孤独や絶望を救ってくれる心のシェルターである映画館で体感してほしい」と、公開拡大のためのクラウドファンディングを3月13日まで行っている。

 1口2千円から。支援額に応じて、非売品の缶バッジやポストカード、TシャツやサウンドトラックCD3枚組などの特典がある。

 目標額は230万円。詳細は映画の公式サイトで。

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「高校大パニック」「狂い咲きサンダーロード」…神戸で特集上映

 「自分革命映画闘争」の公開を記念し、石井岳龍監督の特集上映が神戸市内の二つの映画館である。プログラムは次の通り。

 元町映画館「石井聰亙解体新書」 18、21、24日=「狂い咲きサンダーロード」▽19、23日=「THE MASTER OF SHIATSU 指圧王者」「鏡心・3Dサウンド完全版」▽20、22日=「高校大パニック」「シャッフル」(各日午後4時50分開映)。一般各1500円。同館TEL078・366・2636

 パルシネマしんこうえん「オールナイト上映~聰亙VS岳龍~」 18日午後11時半=石井監督トーク▽同11時45分=「Electric Dragon 80000V」▽翌午前0時50分=「ソレダケ/that's it」▽同2時50分=「パンク侍、斬られて候」▽同5時10分=「生きてるものはいないのか」。前売り一般3600円、学生3千円(当日各300円増)。TEL078・575・7879

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