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アイドルから俳優に転身し、舞台など活動のやりがいを語る田村芽実さん=神戸新聞社(撮影・中西幸大)
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アイドルから俳優に転身し、舞台など活動のやりがいを語る田村芽実さん=神戸新聞社(撮影・中西幸大)
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アイドルから俳優に転身し、舞台など活動のやりがいを語る田村芽実さん=神戸新聞社(撮影・中西幸大)

 アイドルから俳優に転身し、数々の舞台や映像作品への出演で注目を集める田村芽実さん(24)。コロナ禍を経て、観客の舞台離れを感じていると言います。幼い頃から感じる生きづらさと向き合いながら、新たな表現方法を探し求める田村さんに若手俳優としての意気込みを聞きました。(津田和納)

 -2011~16年にハロー!プロジェクトのグループ「スマイレージ(現・アンジュルム)」のメンバーとして人気を博し、その後は俳優として着実にキャリアを積まれています。歌うことや演じることに変化は。

 私は元々、子役をやっていて、いつかはミュージカルに出演することが夢でした。でも、アイドルと役者は全然違うものでした。いかに自分を演出して演じるかがアイドル。役者は自分という体と心を使って、役や作品を届けるものなので、近くてかなり遠いな、と実感しています。

 -アイドルの「田村芽実」は演出された人物だったのでしょうか。

 幼少期からつくられた自分自身を出すこともあったし、ファンやグループ内で形成された「田村芽実」の部分もあったと思います。昭和のアイドルはソロ活動が多いと思いますが、今はグループが主流。私はとっても集団行動が苦手なタイプ。自己主張が強い女の子たちの中で、我慢しなければならないことや、逆に誇張しないといけない部分がありました。なので、グループを卒業する時には、そういうイメージを打ち破るつもりでいました。甘えたくなかったので元の事務所も辞めました。舞台女優として一からスタートするために、芸名も変えて、どこかの劇団に入ろうかとも思いました。

 -新型コロナウイルスの影響で出演する舞台の中止や休演も相次ぎました。どういう気持ちで過ごされてきましたか。

 ピンチはチャンスと思う人間なので、この時間を何かに活用できないかと思いました。でも、精神的にかなり参りました。「この先、どうなるんだろう」とカーテンを閉め切って、ベッドから出られないこともあった。ミュージカルや演劇といった生の舞台と感染症の相性は最悪で、落ち着いてきた今も影響がたくさんあります。

 今年に入って知人から、ブロードウェイの舞台が急に20作品くらい幕を閉じたと聞きました。演劇に足を運んで鑑賞するという文化がなくなってきていると。日本も同様で、演劇が無くても生きていけるじゃん、という時代に入ってきている感覚があります。その中で、自分自身が表現者として生きていくために、演技だけにとどまらずに違った方法を探していかないといけないなと考えています。

 -コロナ禍にクラウドファンディングで資金を募り、ソロミュージカルを配信しました。

 とにかく一人で演劇をつくってお芝居をしてみたかったので、見切り発車でしたが挑戦しました。集団行動がとにかく苦手で、人から変わっていると言われることがすごく多くて、幼少期も生きづらさを感じることが多かった。お芝居も集団行動で、みんなでセリフや踊りのキャッチボールをすることが多くて、これは私の弱みだと思いました。

 一人でお芝居をしたら問題が解決するのではと思って始めたのですが、一人でするのは、大勢でするよりも何十倍も大変でした。「ああ、私はどれだけたくさんの人に支えられてきたのだろう」と実感しました。裏方の仕事も経験したことで自分に協調性が生まれたと思います。

 -最近は武器である歌唱力を封印して、映像作品への出演も増えています。

 ミュージカルの世界はすごく狭い村みたいなところで、同じ役者と何回も共演します。その中に4年ほどいたので、新しい世界に踏み出すのは緊張しましたが、お芝居は大好きなのでとても楽しいです。

 女優魂とよく言われますが、私は役のためなら丸刈りにしたり、下着姿になったりは全然平気。今はコロナ期間なので、舞台上でキスシーンもキスできないんですよ。お芝居だけど、舞台の上では恋人同士として思いあって生きているんだから、感情そのままに演技できないことがもどかしいです。

 -ソーシャルメディアでは、近況を自分の言葉で赤裸々に綴られています。

 女優さんって、夢を見せる仕事だから理想の姿しか見せないという方が多いと思うんですけど、まず私は自分自身でいることを大切にしたいなと思っています。なので、インスタグラムはとても大切な場所。先日、「電車に乗るのが怖い」と心に不安を抱えているという投稿をしたら、多くの方が同じように苦しい状況にいるよとメッセージをくれました。コロナやウクライナ侵攻もあって、精神的に追い込まれている方も多いと思います。私は、この不安を「今の自分にしか見られない世界や感情だ」と思って、味わいながらゆっくりと進んでいこうと思っています。

 -私生活の写真もよくアップされ、「生活オタク」を名乗られています。

 築約70年の古民家に引っ越して1年が過ぎました。冬は底冷えするし、夏は庭に虫だらけ! ずっと蚊取り線香をたいています。昭和が大好きで、レトロな家に住みたいというのが出発点だったのですが、庭でお花を育てたり、手芸で四季の飾りを作ったり、季節を間近に感じる暮らしに満足しています。

 -4月には、画家で友人の有村佳奈さんとアートと音楽朗読劇の共作を上演される予定です。

 脚本と演出を全て自分で手がけました。有村が作ったアート作品に囲まれた会場で、私が朗読を披露する予定です。

 歌以外の表現として、いつかやりたかったことが文章でした。コロナの間もずっと小説を書いてきて、書きためてきた。やっと世の中に出しても恥ずかしくないものになってきたので、その始まりを見守ってもらえたらいいなと思います。

 作品のタイトルは「未完成のエピローグ」。音楽劇「クラウディア」に出演した際、千秋楽の日に脚本・演出家の岸谷五朗さんから「この役を演じるのは今日が最後だから、一つ一つのセリフを成仏してあげてください」と言われたんです。

 舞台上で生きるということは、舞台が終われば役としては死ぬということに気付きました。そして、私はまた新しい役を演じて生きるという風に人生を歩むんなだと。「人は二度死ぬ」と言いますが、一度目は心臓が止まった時、二度目は今世で生きる人たちから存在を忘れ去られた時です。そう考えると、人の一生と演劇はよく似ています。生きるということは、いつか死が待っていると。今までの経験のレクイエムのようなところに焦点を当てて、こう名付けました。

 -これから演劇にどう関わりたいと思っていますか。

 演劇は一部の人の娯楽なんだなと強く感じていて、今の時代に無くてもいいものかもしれないとも思いました。特にコロナ以降、値上げもしてチケット代も高い。物価高とか電気代の値上がりとか、生活していくことを真剣に考えないといけない時代に突入していて、以前は頑張った自分へのご褒美が買えたけど、今の若い層はできなくなってきていると思います。その中で私にできるのは、チケット代にふさわしいだけのパフォーマンスをすることだと思っています。

 人々の分断や戦争を扱った作品にも出演しました。よく思うのは、5歳と3歳の甥っ子たちが苦しい思いをする未来にはしたくないということ。これからも、魂を込めながら作品を作り上げ、気持ちを伝えていきたいと思っています。

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