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太田豊太郎(聖乃あすか、左)とエリス(美羽愛)の最後の舞=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
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太田豊太郎(聖乃あすか、左)とエリス(美羽愛)の最後の舞=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
志を胸にベルリンへ向け出発する太田豊太郎(聖乃あすか)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
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志を胸にベルリンへ向け出発する太田豊太郎(聖乃あすか)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
太田豊太郎(聖乃あすか、左)に日本への帰国を促す相沢謙吉(帆純まひろ)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
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太田豊太郎(聖乃あすか、左)に日本への帰国を促す相沢謙吉(帆純まひろ)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
エリス(美羽愛、右)が身ごもったことを喜ぶ太田豊太郎(聖乃あすか)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
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エリス(美羽愛、右)が身ごもったことを喜ぶ太田豊太郎(聖乃あすか)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
病床の友人、馳芳次郎(侑輝大弥、右)を見舞う太田豊太郎(聖野あすか)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)
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病床の友人、馳芳次郎(侑輝大弥、右)を見舞う太田豊太郎(聖野あすか)=宝塚市栄町1、宝塚バウホール(撮影・小尾絵生)

 宝塚歌劇花組によるミュージカル「舞姫」が3日、兵庫県宝塚市栄町1、宝塚バウホールで開幕した。森鴎外の同名小説を原作に、愛する女性と祖国との間で選択を迫られる主人公の葛藤を描く。成長著しい聖乃(せいの)あすかがりりしく、心優しいエリートを繊細に演じ、悲劇を美しく彩った。

 植田景子脚本、演出。2007年、花組で初演し、翌年には東京・日本青年館でも上演、好評を博した。

 がむしゃらに近代化を目指す明治日本。地方の武家の長男に生まれた太田豊太郎(聖乃)は維新を経て、中央政府派遣の国費留学生として法学を学ぶためベルリンに渡る。

 上司・黒沢(紅羽真希=くれは・まき)の反発を買いながら、自由や美の理想を重んじる西欧の文明精神を貪欲に吸収する豊太郎だが、ある日、教会の前で泣きじゃくる劇場の踊り子、エリス(美羽愛=みはね・あい)と出会い、父の葬儀を出せないという彼女のため懐中時計を渡す。その優しさに触れ、次第に彼を慕うようになるエリス。

 だが、2人の仲は在外日本人の間で中傷の的となり、豊太郎は免職処分。追い打ちをかけるように日本から母の自死の知らせが届く。失意の豊太郎に救いの手を差し伸べたのが旧友の相沢謙吉(帆純=ほずみ=まひろ)で、新聞社の仕事を得た豊太郎だが、妊娠したエリスに相沢は手切れ金を渡そうとする。エリスは精神のバランスを崩し…。

 柔和な笑顔、穏やかな口調、立ち居振る舞いによって聖乃は豊太郎の育ちの良さを印象づけ、劇中のエリスはもとより、観客も引きつける。揺れ動く心情を表現する歌唱力も情感たっぷりだった。堂々とした演技は「正統派男役」と呼ぶにふさわしい。

 美羽のエリスは可憐(かれん)で繊細。豊太郎とのつかの間の温かな時間から、徐々に歯車が狂い、破滅へと向かう過程を丁寧に演じた。その悲しくも美しい狂気によって、鴎外と恋人の実話を基にして生まれたこの物語に、説得力を持たせた。

 脇を務める若手の成長ぶりにも目を見張るものが。友を思うが故、嫌われ役を買って出る相沢を帆純が好演。侑輝大弥(ゆうき・だいや)は豊太郎に影響を与える画家、馳芳次郎を野性味あふれる演技で見せた。

 映像を効果的に交え、奥行きを生かした舞台装置、端役まで行き届いた演出と、植田のきめ細やかさが光る。

 これから何度でも再演してほしい、美しい作品だった。

 14日まで(8日休演)。

(片岡達美)

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