取材に応じる村上浩爾・宝塚歌劇団理事長=31日午後、宝塚市栄町1
取材に応じる村上浩爾・宝塚歌劇団理事長=31日午後、宝塚市栄町1

 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の村上浩爾理事長は31日、同市の宝塚大劇場で報道各社の取材に応じた。宙組に所属していた俳優の女性=当時(25)=が昨年9月に急死して以降、取りやめていた宙組公演を今年6月に再開させた理由について「お客さまに舞台をお届けする。舞台を見ていただくことが私どもにできることだ」と説明。現時点での宙組の再編も否定した。

 宙組には、女性へのパワハラに関わったとされる上級生らが遺族側の説明で少なくとも10人いるが、歌劇団は女性の急死に対し「責任を負うべきは歌劇団である」とし、団員個人は処分していない。

 宙組公演の再開について歌劇団は、大阪、兵庫、京都拠点の新聞社や通信社が加盟する大阪芸能記者会が求めた開幕初日の取材に応じず、村上理事長とトップスター芹香斗亜さんのコメントを各社にメールで送るのみだった。

 開演前には、村上理事長が公演中止や演目変更について「ご迷惑をおかけした」と謝罪。終演後に芹香さんもあいさつしたが、いずれも団員の急死に言及しなかったという。

 31日の取材で村上理事長は、上級生らによる女性へのパワハラを認め、遺族との交渉合意を発表した3月末の時点で遺族への謝罪の手紙が間に合っていなかった団員について「在団生については全員送らせていただいた」と明かした。その上で公演再開は「(歌劇団内で)コミュニケーションを取りながらしっかり舞台をやっていくべきだ、と歌劇団として判断した」と説明した。

 開幕初日に女性や遺族への弔意を表さなかったことには「ご遺族がその場におられないのに軽々に言葉にすることはできない」と、自身の判断であえて口にしなかったとした。退団が相次ぎ、他の組より人数が少なくなっている宙組の体制についても、現時点では「今のメンバーできちっと進めていきたい」と言及した。宙組の公演は現在、東京宝塚劇場で開催している。

 一方、宝塚歌劇の公演スケジュールや稽古期間の見直しに加え、パワハラと指摘された「あしき伝統」は「明らかに過剰、非合理的、舞台の安全性と関係がないと判断したことについては見直している」と説明。組ごとに幹部団員を中心に進め、宙組では組長、副組長らと歌劇団スタッフによる話し合いの場を設けたという。ハラスメント研修も実施しているといい「時間はかかるが、時代に応じてアップデートしていきたい」と述べた。

 また、外部有識者でつくる助言機関からの意見についても「本年度中をめどに何らかの形で報告したい」とし、「現在、全力で改革に取り組んでいる」と話した。

 同日の取材は大阪芸能記者会の求めに応じた。取材対応は上級生らによる女性へのパワハラを認め、遺族との交渉合意を発表した3月末の会見以来。村上理事長は「改革を一歩でも前に進めるため注力していた」と弁明した。(片岡達美)

 【宝塚の俳優急死問題】昨年9月末、宝塚市内で宝塚歌劇団宙(そら)組所属の俳優女性=当時(25)=が死亡しているのが見つかった。兵庫県警は自殺の可能性が高いとみて捜査。遺族は歌劇団側に謝罪と補償を求めた。今年3月末、歌劇団側は上級生らによるパワハラ行為が「女性の多大な心理的負荷になっていた」と認めて謝罪し、遺族と合意書を締結。昨年10月から公演を中止していた宙組は6月20日に公演を再開した。