近代財界5人衆というと古河市兵衛、大倉喜八郎、安田善次郎、渋沢栄一、そして朝来市出身の実業家、原六郎(1842~1933年)となる。いずれも天保年間に生まれ、豪商や藩閥の後ろ盾はなく、独創力と行動力で激動の時代を駆け抜けた。
中でも原は知られざる存在といってよい。銀行や鉄道、エネルギー、交通など100社を超える企業の設立に携わり、近代化に貢献した大立者でありながら、財閥を組織することなく、名を冠した企業もつくらず、爵位も固辞し続けた。本書は無冠にして希代のアントレプレナーの素顔と風土に迫った本格評伝である。