作家堺屋太一の近未来小説である。通商産業(現経済産業)省時代、大阪万博や沖縄海洋博を担当した異色のプランナー官僚は昭和から平成にかけて卓抜な時代センスを発揮した。石油危機をテーマにした「油断!」でデビューし、「団塊の世代」「ひび割れた虹」など意欲作を連発した。その延長線にある本作は「小説・空港国際競争」と文庫副題にあるとおり1994年9月に開港した関西空港に夢と情熱をかける人々を描いた。開港4カ月後の刊行というから驚きだ。今夏で関空30周年、本書を再読しよう。物語は8月29日の開港式典から始まる。