「銀傘」をアルプス席まで拡張した甲子園球場のイメージ(阪神電気鉄道提供)
「銀傘」をアルプス席まで拡張した甲子園球場のイメージ(阪神電気鉄道提供)

 阪神電気鉄道は2日、甲子園球場(西宮市)の内野席を覆う大屋根「銀傘」をアルプス席まで拡張する計画に関し、今年11月に着工し、2028年3月に完成させると発表した。第100回選抜高校野球大会の開幕に合わせる。拡張面積は約3300平方メートルで、アルプス席の約7割を覆う。

 球場外周に新設する地上6階建ての建屋で支える構造。スタンドに柱を設けず、観戦環境の快適性を高める。建屋には売店や個室観覧エリアなどが入る。総工費約150億円。秋冬のオフシーズンに大林組が4期に分けて工事を進める。

 夏の全国高校野球選手権大会での救急搬送者はアルプス席からが最も多いという。新たに銀傘に覆われる同席中段では日照時間が1日当たり約6時間減らせるといい、出場各校の応援団の暑さ対策につなげる。

 この日、甲子園球場で会見した阪神電鉄の谷本修取締役は「球場の歴史と伝統を新たな次代に紡いでいくには、猛暑をはじめ環境の変化に柔軟に対応することが必要」と強調。同席した日本高野連の宝馨会長は「大変有意義な素晴らしい計画」と歓迎した。

 甲子園球場は開業当初から「大鉄傘」と呼ばれた鉄製の大屋根を内野席に備えた。1931年にアルプス席に広げ、戦時中の金属供出で取り外された43年まで同席を覆った。51年に内野席の一部を覆う形で復活。2009年に現在の姿に架け替え、内野席両端まで広げた。(大島光貴)