「スポーツを通じて誰もが一生涯、心身ともに健康な社会をつくる。その創業理念がぶれることはない」と語る廣田康人氏=神戸市中央区港島中町7(撮影・大田将之)
「スポーツを通じて誰もが一生涯、心身ともに健康な社会をつくる。その創業理念がぶれることはない」と語る廣田康人氏=神戸市中央区港島中町7(撮影・大田将之)

 アシックスでさまざまな経営戦略を推し進めた廣田康人氏(67)。本社と販売会社の円滑な意思疎通のため製販を一体化する「カテゴリー制」を導入、自社のシューズをトップ選手に売り込み利用者の裾野を広げて「頂上」(Chojo)を目指す「Cプロジェクト」も展開した。2023年12月期決算は中期経営計画の目標の2倍を超える過去最高の営業利益542億1500万円で着地した。

 油断はしていません。経営者は貪欲です。昨年の会社の合言葉は「こんなもんじゃない」。今年は「脚をとめるな」です。地球儀を俯瞰(ふかん)したビジネスができるかどうか。日本にいると日本中心の発想になりますが、それを超えられるかどうかです。スポーツ用品、スポーツサービスを扱う私たちの商材はグローバルで通用するものですから、チャレンジしやすいと思っています。もちろん日本で勝てなかったら意味がありませんが、高齢化など課題先進国の日本で成功したモデルが海外に展開できることはあり得ます。日本の顧客の要求レベルに応えることは、世界でもかなり高いレベルのものが出せることにもつながります。

 好業績連発のさなか、24年1月に外資系企業など海外経験が豊富で、デジタル分野にも詳しい常務執行役員の富永満之氏(62)に社長職を継いだ。自らは会長兼CEOとして経営全体を見渡す。