企業経営を次世代につなぐヒントを学ぶ「中小企業のための経営戦略セミナー」(神戸新聞社主催)が22日、神戸市中央区の神戸駅前研修センターで開かれ、約50人が参加した。神姫バス(姫路市)の長尾真社長が基調講演し、環境の変化に合わせて自社も変わってきた歩みを紹介した。
1982年に入社した長尾社長は同社のバス事業について振り返り、乗客の減少に加え、規制緩和で新規参入が増えたため収益が厳しくなったと説明。事業の多角化を推進し、車両整備や不動産、飲食、パチンコ店、自動車販売などの事業に取り組んだとした。
2013年に社長に就任し、15年に「選択と集中」に転換。神戸市バスの運行受託などでバス事業が安定したことから、不採算部門を整理していったという。
22年以降は山間部の野菜をバスで都市部へ運ぶなど、まちづくりに関わる事業を展開。「困り事の解決を収益につなげていきたい」とした。今後については「既存のバス事業の深掘りと、エリアの拡大を進める」と強調。具体例として、高価格帯の旅ブランド「真結」ツアーや、神戸の都心とウオーターフロントを結ぶ連節バス「ポートループ」の運行などを挙げた。
企業の合併・買収(M&A)に伴う失敗談も披露した。中食事業を手がける企業を買収した際には、仲介者を入れなかったため、両社の関係が悪化。「相手に本当のところを話してもらえず、収拾がつかなくなってしまった」といい、5年で売却したと振り返った。
セミナーでは、協賛企業のM&A総合研究所(東京)の担当者によるM&A事例の紹介もあった。(石川 翠)