確認調査で壺が出土した(西宮市提供)
確認調査で壺が出土した(西宮市提供)

 西宮市が再整備を進める西宮中央運動公園(河原町)で貴重な遺物が出土し、2029年3月ごろを見込んでいた公園全体の利用が3年程度遅れることが分かった。埋蔵文化財として記録、保存する発掘調査を行うためで、今月15日にあった臨時議会では調査費用を計上した補正予算案が可決された。(堀内達成)

 同公園は約6・5ヘクタールで、体育館やテニスコート、陸上競技場などがある。体育館が完成から60年が経過するなど多くの設備が老朽化しているため建て替えるなどし、イベント開催ができる広場やカフェも新たに整備する計画だ。

 公園用地西側には県が埋蔵文化財包蔵地に指定する広田遺跡があり、埋蔵文化財が発見される可能性が高かったため、市は17年12月~18年2月、「試掘調査」として15カ所を調査。その結果、数カ所から古墳や平安時代の遺物などが発見された。公園用地が広田遺跡同様、埋蔵文化財包蔵地に指定され、より詳しい「確認調査」が必要に。24年9~10月に実施したところ、114カ所のうち35カ所から古墳時代の土器や瓶などが出てきた。

 この二つの調査を受け、図面や写真などで詳細な記録を残す「本発掘調査」がさらに必須となり、調査のための工事を今年7月に始める。調査は2期に分けて計約3年かかるため、陸上競技場は28年春ごろ、体育館は29年夏ごろ、公園全体の利用開始は32年3月ごろまでずれ込むことになった。

 調査費用は、約2年間の1期分のみで約30億円を見込む。国からの補助金などはあるが、それでも市の負担は約16億円に上る。市は現在、厳しい財政難に陥っており、担当部署は「都市計画税や市債を活用するなどして一般財源の支出を抑え、財政への影響を少なくしたい」としている。

 2期目の調査は30年ごろに1年程度かけて行うといい、費用は今後決定する。また、調査費を除いた再整備事業費は当初約218億3千万円だったが、3年遅れの影響などで建築費や運営維持管理費がさらに増える可能性が高いという。

 本発掘調査は最大で深さ5メートルまで掘削し、遺物の洗浄や台帳の作成、理化学的分析などを行う。成果の市民への公開については、現地説明会や市立郷土資料館での遺物展示などを考えているという。