新酒の季節の到来を知らせる真新しい杉玉「酒林」が27日、灘五郷の一つ、西宮郷にある白鹿記念酒造博物館(兵庫県西宮市鞍掛町)にお目見えした。青々とした大玉は直径85センチと存在感たっぷり。すがすがしい香りとともに、酒どころらしい風情を醸し出している。
杉の葉を束ねて作る酒林は江戸期以降、酒屋の軒先につるされ、新酒の仕上がりを告げたという。老舗清酒メーカー「辰馬本家酒造」(建石町)は長年、新酒を搾る「初揚げ」に合わせて制作。阪神・淡路大震災後は酒蔵に加え、同博物館の玄関先にも飾ってきた。
製法は社内で受け継がれてきた。竹製のかごに杉の枝葉を差し込み、はさみで球状に刈り込む。今年は軽トラックにたっぷり1杯分の杉の葉を使い、製造本部醸造部の阿部大輔さん(43)が1週間かけて大玉を仕上げた。
接着剤やくぎを使わないため、作業の途中で崩れる恐れもあるという。古い酒林と付け替えを終えた阿部さんは、ほっとした表情を見せ、「楽しみに待つお客さんもいるので、無事に披露できて何より。今季も喜んでもらえる酒をつくりたい」と目を細めた。
同社の新酒は3カ月から半年かけて熟成させ商品化される。(小林良多)

























